著者
時田 喜子 吉野 智生 大沼 学 金城 輝雄 浅川 満彦
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S13-S18, 2014 (Released:2014-06-10)
参考文献数
19

2000年から2010年にかけて八重山諸島で回収された16個体のカンムリワシの胃内容物を検査した.そのうち13胃に何らかの内容物を認め,それらを70%エタノールにて固定後1mmメッシュの篩を通して種ごとに分け,乾燥させた後に乾燥重量を測定した.含まれていた内容物は貧毛類(フトミミズ科),甲殻類(ベンケイガニ,小型カニ類),昆虫類(半翅目セミ科,直翅目の1種,属種不明昆虫類),両生類(オオハナサキガエル),爬虫類(キシノウエトカゲ,イシガメ科の1種),鳥類(シロハラクイナ,属種不明小型鳥類),植物片および小石の計13品目で,甲殻類がもっとも高頻度で検出された.捕食することによる中毒や,殺鼠剤散布による影響が懸念されていたオオヒキガエルやネズミ類は検出されなかった.石垣島の個体からは3品目,西表島の個体では13品目と,島によって食物の出現種数が異なっていた.甲殻類は夏季だけでなく冬季にも出現し,カンムリワシの食物として重要であることが示唆された.
著者
小倉 剛 川島 由次 金城 輝雄 比嘉 源和 石橋 治 新妻 淳 座間味 満
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.55-62, 2003-03

渡嘉敷島において崖から転落し,治療後に死亡したケラマジカ(Cervus nippon keramae)1例の死亡個体分析を行った。本例は椎定8.5歳以上の雄で,体重33.5kg,全長1360mm,尾長101mm,肩高770mmであった。ライニー指数は18.5を示したことから,貧栄養状態にある個体であった。また,ケラマジカにおけるマゲシマチマダニ(Haemaphysalis mageshimaensis)の寄生を初めて確認した。精巣および精巣上体に精子が認められなかったことから,最も低い繁殖活動状態にあったと推察された。ケラマジカは,年間を通してニホンジカ(C.nippon)の繁殖活動の季節性をほぼ踏襲していることが示唆された。下顎左側の第3臼歯では,遠心咬頭が後方に分離形成されていたが,その成因は不明であった。剖検では,胸部および腰部胴骨系の広範囲な骨折,大腿骨の脱臼と骨折および骨折部位での出血が確認されたことから,これらの骨折が死亡原因と推察された。ケラマジカの保護,個体群の特性評価のためには,今後さらに死亡個体の収集と個体分析が必要と考える。