著者
西田 正人 笠原 国武 金子 實 岩崎 寛和 林 一雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1103-1111, 1985-07-01
被引用文献数
11

39歳の子宮癌患者から新しい子宮体内膜腺癌細胞株(Ishikawa株)の樹立に成功した.細胞は単層シート状に配列して増殖し,容易に重積する.培養開始後3年8ヵ月を経過して安定した増殖を続けており,現在第60代に至っている.細胞増殖倍加時間は9代,40代,50代でそれぞれ約36,29,27時間である.染色体はdiploid領域にモードを持っている.本細胞をヌードマウスに移植すると分化型子宮体内膜腺癌に一致した管状腺癌組織を再構築する.移植腫瘍組織とin vitro培養細胞からエストロゲン,プロゲステロンレセプターが共に陽性に検出された.in vitroにおいて培地中からestrogenを除去しても細胞増殖は維持され,本細胞株はestrogenに依存性を示さなかった.
著者
島崎 正美 入野 裕史 金子 實
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.49-54, 2008
参考文献数
13

石垣島や西表島などの八重山諸島では,偶発的に発生するヤエヤマムラサキ(Hypolimnas anomala)の母蝶が,産卵後の孵化から幼虫が2令に成長するまでずっと葉裏にとどまってそのままの姿勢で死ぬことが多いという特異な習性を示すことは広く知られていて,日本ではその母蝶がいなければ全く孵化しないとか,例え孵化してもその後幼虫が順調に成育できないと信じられていた.この蝶の上記習性に関しては,NafusとSchreiner (1988)が,グアム島において本邦と同一ではない餌植物で発生しているヤエヤマムラサキに関する生態研究結果を報告しているが,本邦における母蝶に関する報告例はきわめて少ない.筆者らは2001年から2002年にかけて卵保護状態にあった母蝶がいなくなったあとも正常に蝶にまで生育できた野外観察結果を報告した(蝶研フィールド,2002)が,NafusとSchreinerによる報告とはいくらか異なる知見を含む複数の野外観察事例を追加して,母蝶がいなくなっても卵から蝶まで正常に育つことは稀ではなく母蝶の保護が必須ではないとの結論を得た.ただし,本報告中でも述べたように実際に母蝶の保護がないと正常に成育できなかった例もあり,母蝶が産卵後に葉裏にとどまり続けることの真の理由解明にはさらなる調査・研究が必要である.