著者
目崎 登 佐々木 純一 庄司 誠 岩崎 寛和 江田 昌佑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.247-254, 1984-02-01
被引用文献数
10

スポーツトレーニングが生殖生理機能,特に月経現象に及ぼす影響について,筑波大学女子運動部員174名を対象として,アンケート調査した.各スポーツの運動量から,激しいスポーツをA群100名,比較的軽いスポーツをB群74名とした.なお,特別な運動歴のない本学一般学生137名を対照群とした.1)身体的特徴:体格の指標として体内水分量/体重比を用いた.対照群は数値の高い方への分布が多く,運動選手は低値への分布が多い.平均値は,夫々52.6±2.4%(Mean±SD),51.7±1.9%(p>0.001)である.すなわち,運動選手の方が体内水分量が少なく,脂肪量が多く,体格が立派である.2)月経:持続日数の平均は対照群5.8±0.9日,A群5.6±1.0日,B群5.8±1.1日である.過長月経の頻度は対照群0.0%,運動選手3.O%(p<0.05).月経血量こついて,少量とする者は対照群2.9%,A群10.0%(p<0.05),B群14.9%(p<0.001).すなわち,運動選手は少量の月経が長期間持続する傾向にある.3)月経困難症:各群とも主症状は下腹痛と腰痛である.日常生活に著しい支障をきたし服薬する者は,対照群17.5%,運動選手9.8%(p<0.05)である.4)月経周期:稀発月経,頻発月経の頻度に差は危い.不整周期症は対照群10.9%,A群25.0%(p<0.01),B群18.9%である.すなわち,激しいスポーツトレーニングにより,月経周期の異常が発生しやすい.5)月経周期とコンディション:良い時期は月経後1週間と月経と月経の中間期.悪い時期は月経期間中と月経前1週間.6)月経周期の調節:実行中1.2%,以前は実行した5.2%,実行したいが心配15.0%,考えたことたし78.0%.運動選手ではその月経現象に異常の頻度が高いので,将来の妊娠・分娩などを含めた生殖生理機能についても考慮した,婦人科的た保健管理が必要である.
著者
玉田 太朗 岩崎 寛和
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.947-952, 1995-09-01
被引用文献数
11 6

1. 産婦人科外来を訪れた35歳〜59歳(1929年4月〜1953年3月の間に誕生)の患者のうち, 両側卵巣摘出あるいは子宮摘出, ホルモン剤服用および子宮筋腫合併例を除く1,654例について閉経年齢を調査した. 2. 受診時の月経の有無(1年以上の無月経を閉経と判定した)に基づき, プロビット法により解析した結果では, 50%閉経年齢(閉経年齢中央値)は50.54歳, 10%閉経年齢, 90%閉経年齢はそれぞれ45.34歳, および56.34歳であった. 3. 既閉経者の記憶による閉経年齢に基づき閉経年齢を推定した. 記憶閉経年齢は左裾が長い非正規分布を示したが, 平均49.47歳, 標準偏差3.526歳であった. 記憶閉経年齢の分布は, 50歳, 45歳など区切りのよい年齢で異常に高く, 正確さに問題があると推測される. 4. 子宮筋腫が閉経を遅延させる因子(Odds比=9.41)であることが明らかになったので上記の解析では子宮筋腫合併例は除いたが, 卵管結紮あるいは一側卵巣摘出術は閉経年齢に影響を及ぼさなかったので解析に含めた.
著者
目崎 登 佐々木 純一 庄司 誠 岩崎 寛和 江田 昌佑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.49-56, 1984-01-01
被引用文献数
3

思春期あるいはそれ以前に開始されるスポーツトレーニングが初経発来に,どのような影響を及ぼすかをアンケート調査した。筑波大学の女子運動部員174名を対象とし,体育学の立場から,各スポーツの運動量により,激しいスポーツをA群100名,比較的軽いスポーツをB群74名とした.特別な運動歴のない本学一般学生137名を対照群とした。1.身長:対照群157.0±4.1±cm(Mean±SD),運動選手161.5±6.1cm(p<0.001),体重:夫々51.0±5.0kg,55.4:±6.6kg(p<0,001).2.初経年齢:対照群12歳7.7月±12.2月,運動選手12歳9.9月±13.4月(A群12歳10.5月±13.7月,B群12歳9.2月±13.1月).3.トレーニング開始年齢別初経年齢:各年齢群とも平均初経年齢は12歳6月から13歳の間にあり,特定の傾向は認められない.4.トレーニング開始時期と初経年齢:初経発来前よりトレーニングを開始した老の初経年齢は13歳1.4月±13.1月と遅延(p<0.001).初経発来後にトレーニングを開始したとする老の初経年齢は12歳0.6月±9.9月と早い(p<0.001).運動量による影響を調査するためにA群とB群に分けて検討した.A群では,初経前トレーニング開始者の初経年齢は13歳3.O月±13.1月と遅延(p<0.001)し,初経後開始者では11歳11.O月±6.6月と早い(p<0.001).B群では,ほぼ同様の傾向を示すが,統計学的な有意差はない.スポーツトレーニングの初経発来に及ぼす影響を調査した結果,以下の結論を得た.非常に早期に,若年齢のうちから激しいスポーツトレーニングを開始すると初経発来を遅延させる。
著者
西田 正人 笠原 国武 金子 實 岩崎 寛和 林 一雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1103-1111, 1985-07-01
被引用文献数
11

39歳の子宮癌患者から新しい子宮体内膜腺癌細胞株(Ishikawa株)の樹立に成功した.細胞は単層シート状に配列して増殖し,容易に重積する.培養開始後3年8ヵ月を経過して安定した増殖を続けており,現在第60代に至っている.細胞増殖倍加時間は9代,40代,50代でそれぞれ約36,29,27時間である.染色体はdiploid領域にモードを持っている.本細胞をヌードマウスに移植すると分化型子宮体内膜腺癌に一致した管状腺癌組織を再構築する.移植腫瘍組織とin vitro培養細胞からエストロゲン,プロゲステロンレセプターが共に陽性に検出された.in vitroにおいて培地中からestrogenを除去しても細胞増殖は維持され,本細胞株はestrogenに依存性を示さなかった.
著者
角田 肇 臼杵 〓 岩崎 寛和 美誉志 康 市川 意子
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.437-445, 1983-04-01

女性性器は膣から卵管に至る管腔臓器であり,性交,月経,分娩など細菌感染の機会も多いという解剖生理学的な条件から,性器感染症の頻度が高い理由を説明できる.従来子宮腔や卵管などは生理的には無菌と信じられているが,かかる要因から,発症するか否かは別として,細菌が上行して存在する頻度は決して少なくないと推定される.一方子宮頚部病変に由来する子宮周囲組織(傍結合織)の炎症性変化,いわゆる傍結合織炎の病態については諸説があって結論がえられていない.以上の実態を明らかにすべく研究を行った.対象は子宮癌16例と子宮筋腫,内性子宮内膜症だと良性疾患13例で,すべて腹式子宮全摘出術時に各組織を無菌的に採取し,膣分泌物も含めて好気性ならびに嫌気性菌の検出を系統的に行なった.1.良性疾患では13例中6例に嫌気性菌を証明した.2.子宮内膜から5例,卵管および傍結合織から5例に細菌の存在が証明された.3.頚癌0期のうち,円錐切除後の2例では,頚部周囲組織に著明な細菌感染を認めた.4.頚癌および体癌では,進行期が進むにつれて,リンパ節ならびに傍結合織中に細菌検出率が上昇した.5.膣以外の部位に嫌気性菌を証明しえた頻度は良性疾患では13例中3例に過ぎなかったが,子宮癌では16例中9例と過半数を占めた.6.膣と膣以外の部位との細菌叢の相関は,余り密接ではないが,ある程度の相関性を認めた.なお証明された細菌叢の大部分は腸内細菌叢として知られているものである.以上の成績から,膣内細菌叢は上行性あるいは経頚管壁リンパ行性に内性器および周囲組織に波及し,常在菌叢として存在することが証明されたが,これらの細菌は生体の条件により慢性あるいは急性炎症を惹起する,いわゆるopportunistic infectionの可能性を示唆している.