著者
釜付 弘志 金倉 洋一 野村 裕久 永田 文隆 石川 順子 新里 康尚 山口 陽子 丹羽 邦明 森川 重敏 高橋 正明 米谷 国男 徳永 泰基 石川 洋 伊藤 誠
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.849-858, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

従来, 切迫早産の治療は安静療法が主で, その補助療法として薬物療法がある。しかしその副作用や投与限界量等により, 有効な治療効果が達成できないことがある。今回我々はこのような症例に対して灸療法と, その原理から電気的に考案されたマイクロ波発振装置による刺激療法を行い, 良好な結果を得たのでここに報告する。妊娠24週以降の切迫早産患者に対して至陰, 湧泉, 三陰交の穴に灸療法を行った。その結果, 灸療法により作用時間は短かったが子宮緊張が緩和され, 胎動が増加し, 臍帯動脈, 子宮動脈の血管抵抗が低下することがわかった。また, マイクロ波刺激を頻回に行うことにより同様の効果を長時間持続でき, しかも副作用は認められなかった。その結果, 薬物療法に灸療法を併用すると薬物の使用量を減らすことができ, それによって副作用の発現頻度を抑えることができた。灸療法は切迫早産の新しい治療法として有効かつ安全であると考えられた。
著者
森川 重敏 石川 順子 釜付 弘志 新里 康尚 渡辺 朝香 石川 洋 千原 啓 永田 哲朗 米谷 国男
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1495-1502, 1990

当科で行っている塩酸 Bupivacaine を用いた持続硬膜外麻酔 (以下硬麻) による無痛分娩の安全性の確立を目的として, 硬麻下に生まれた新生児の神経行動および長期予後として, 乳児の精神発達について比較検討した. 合併症のない満期産頭位経腔分娩例中, 無作為に抽出した硬麻群72例 (吸引分娩 (以下VE) 33例, 非吸引分娩 (以下NSD) 39例), 同様に対照群として非硬麻群28例 (VE 13例, NSD 15例) について, 1) 局麻薬 Bupivacaine 濃度と Neurological and Adaptive Capacity Score (NACS) (Amiel-Tison et al.) を用いた新生児の神経行動との相関, 2) 新生児における NACS と総哺乳量および新生児体重減少との関連, 3) 長期予後として, 津守・稲毛による乳幼児精神発達質問紙を用いた乳児の精神発達について比較検討し, 以下の結果を得た. 1) 局麻薬 Bupivacaine の母体静脈血, 臍帯静脈血, 臍帯動脈血中濃度は, すべて Bupivacaine 総投与量と相関していた. そして, 新生児の神経行動 (NACS) は, Bupivacaine 総投与量が多いほど, 不良であることが判明した. 2) 硬麻下に生まれた新生児の1時間以内の NACS は, 分娩様式の別なく不良であり, この抑制傾向は, 生後3日目まで残っていた. 3) Bupivacaine 総投与量と分娩所要時間は相関していた (r=0.85). また, 分娩所要時間が200分以上の群は200分未満の群に比較して, 新生児の1時間以内の NACS は, 硬麻の有無, 分娩様式にかかわらず, 抑制傾向がみられた. 4) 新生児の総哺乳量は, 硬麻群において, 生後2日目まで抑制傾向がみられたが, 生理的体重減少では差はみられなかった. 5) 長期予後としての乳児の精神発達は, 生後11ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月時, 硬麻群, 非硬麻群間に有意差を認めず, 児の精神発達は良好であった. 以上, 硬麻は安全性の高い, ほぼ理想的な無痛分娩法といわれているが, 新生児の神経行動から短期予後について検討すると, まだ改善すべき点があると思われる. しかしながら, 児の長期予後としての精神発達は問題ないと考えられる.