著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-28, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
9

目的:現場で意識レベルがJapan Coma Scale(JCS)=1と判定された症例について調査する。方法:2009年8月1日からの4年間に救急車で当院へ搬送され,現場での意識レベルが記録されていた4,626例を対象とした。現場の意識レベルがJCS=0,JCS=1,JCS≧2の3群に分け,比較した。結果:JCS=1の原因病態は失神,てんかん,過換気症候群,急性アルコール中毒,頭部外傷,脳血管障害,循環血液量減少などが多く,意識障害に近い病態分布を示した。結論:最も軽症の意識障害を示すJCS=1という病態は確かに存在し,かつJCSを用いてしか判断できない。しかし,JCS=1の頭部外傷症例はJCS=0の8倍強,脳血管障害は約3倍と頻度が高い。救急救命士らはこの事実を認識し,より慎重に意識レベルを判定するとともに,搬送先選定にも役立てるべきであると考える。JCS=1を意識障害として認識するなら,JCSという評価方法は,より軽症の意識障害を拾い上げるという観点に限れば,Glasgow Coma Scaleより優れていると考えられる。
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.131-135, 2017-09-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
8

目的:救急救命士らが意識レベルをJapan Coma Scaleで1(以下,JCS-1)と判定する際,何を根拠にJCS-1と判断しているのか,を調査する.方法:2011年7月1日以降25ヶ月間に救急車で当院へ搬送され,救急救命士らが現場で意識レベルをJCS-1と判定し,かつ当院搬入後,確認のための質問に対する回答が得られた症例を対象として調べた.結果:対象となった105例を調査すると,救急救命士らが意識レベルをJCS-1と判定した根拠として,「ボーッと,あるいはボンヤリしていた」が61.0%,「反応が鈍い」あるいは「返答が遅かった」が47.6%で挙げられていた.結論:救急救命士らは上述の「印象」によってJCS-1と判定していた.このような印象は「今ひとつハッキリしない」状態を捉えるには有用と考えられる.ただし,救急救命士らはJCS-2あるいは-3に該当するかもしれない症例をJCS-1と判定している可能性があり,見当識あるいは見当識障害を正しく認識できていないと考えられた.
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.708-714, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
18

目的:過換気症候群(HVS)と診断された症例を後方視的に検討した。方法:2009年4月からの3年間に当院へ救急車で搬送されたHVS 653例の特徴を検討した。結果:当院へのHVS救急車搬送は,全搬送数に占めるHVSの比率が高く,若年者・女性・昼間発症例が多く,複数回搬送が少なく,精神疾患の既往が多く,鎮静薬の投与比率が低い,などの特徴があげられた。これらの特徴は,当院の立地が大きく影響していると考えられた。結論:HVSは「過換気と呼吸性アルカローシス(RA)に関連する症状」と「症状の急速な改善」だけで診断することが可能と考えられた。ただし,症状の速やかな改善がない場合は必ず,可及的に過換気を生じる器質的疾患を除外する,あるいは血液ガス分析でRAを確認する必要があると考える。

6 0 0 0 OA ヌタウナギ

著者
山口 陽子
出版者
日本比較内分泌学会
雑誌
比較内分泌学 (ISSN:18826636)
巻号頁・発行日
vol.45, no.166, pp.10-13, 2019 (Released:2019-03-15)
参考文献数
13
著者
釜付 弘志 金倉 洋一 野村 裕久 永田 文隆 石川 順子 新里 康尚 山口 陽子 丹羽 邦明 森川 重敏 高橋 正明 米谷 国男 徳永 泰基 石川 洋 伊藤 誠
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.849-858, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

従来, 切迫早産の治療は安静療法が主で, その補助療法として薬物療法がある。しかしその副作用や投与限界量等により, 有効な治療効果が達成できないことがある。今回我々はこのような症例に対して灸療法と, その原理から電気的に考案されたマイクロ波発振装置による刺激療法を行い, 良好な結果を得たのでここに報告する。妊娠24週以降の切迫早産患者に対して至陰, 湧泉, 三陰交の穴に灸療法を行った。その結果, 灸療法により作用時間は短かったが子宮緊張が緩和され, 胎動が増加し, 臍帯動脈, 子宮動脈の血管抵抗が低下することがわかった。また, マイクロ波刺激を頻回に行うことにより同様の効果を長時間持続でき, しかも副作用は認められなかった。その結果, 薬物療法に灸療法を併用すると薬物の使用量を減らすことができ, それによって副作用の発現頻度を抑えることができた。灸療法は切迫早産の新しい治療法として有効かつ安全であると考えられた。
著者
平澤 康孝 河野 千代子 山田 嘉仁 前村 啓太 竹島 英之 槇田 広佑 山口 陽子 一色 琢磨 鈴木 未佳 山口 哲生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1457-1459, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

症例1は,78歳男性.インフルエンザワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにて両下葉背側に多発浸潤影を認め,同ワクチンによる薬剤性肺障害が疑われた.集学的治療を行うも,第32病日に死亡.症例2は,68歳男性.特発性肺線維症にて無治療経過観察中であったが,同ワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにてすりガラス影の出現を認め,接種契機の間質性肺炎急性増悪が疑われた.治療を行うも,最終的にニューモシスチス肺炎にて死亡.インフルエンザワクチン接種による肺障害の可能性に注意を要すると考えられた.
著者
多賀 厳太郎 山口 陽子 清水 博
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.p125-153, 1992-11

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。特別寄稿
著者
山口 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

我々ヒトを含む脊椎動物の大半は、鰓や腎臓の働きにより、体内の水分とイオンのバランスを常に一定に保つ「調節型」生物である。この体液調節能力の起源を明らかにするため、現生脊椎動物で唯一、体液組成が海水と等しい「順応型」のヌタウナギに着目する。ヌタウナギの鰓・腎臓および筋肉で、各種物質輸送に関わる分子群やホルモン受容体の局在パターンを調べ、個体レベル(鰓・腎臓)および細胞レベル(筋肉)での体液調節機構を検証する。これにより、「調節型」と「順応型」の違いを生み出す分子基盤を解明する。
著者
中谷 裕教 山口 陽子 Nakatani hironori Yamaguchi yoko
雑誌
【C】平成21年電気学会電子・情報・システム部門大会講演論文集
巻号頁・発行日
pp.211-214, 2009-09-03

我々は外界の情報の多くを視覚を通して得ている。しかし視野内の全ての物を処理すると時間がかかり刻一刻変化する環境に対応できない。正確さを欠いたとしても、直感的にかつ瞬時に外界を認識し判断を下すには、何らかの価値観に基づいて処理すべき優先順位を事前に設定し、優先度の高いものを処理すべきである。本研究では、処理の優先順位の定量的評価から各被験者の価値観を推定し、価値観の違いによる脳活動の違いを比較した。
著者
水原 啓暁 山口 陽子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.12, 2008 (Released:2008-11-10)

複数の周波数での振動子ダイナミクスの協調は異なる脳皮質部位において表象された情報統合を実現する戦略の一つであり,記憶形成とのかかわりにおいて注目されている.本研究では,空間的に分離した脳皮質部位においてγ波により表象される情報が,θ波の特定位相で統合されることにより,陳述記憶の保持が実現されていることを示すために,新規な風景に関する記憶課題を遂行中の脳波計測を実施した.その結果,左前頭腹外側電極において観察されるθ波の特定位相において,右前頭腹外側電極および左前頭背外側電極において観察されるγ波が記憶保持中に増加することが明らかになった.このことは,空間的に分離した皮質部位においてγ波により表象されている新規風景に関する情報を,θ波の特定位相において同時に活性化することにより,これらの情報統合を実現していることを示唆している.
著者
高木 秀明 安藤 嘉奈子 山口 陽子 井上 果子
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
no.37, pp.115-124, 1997-11

This study investigates the relation between the religious belief and the tendency of dogmatism among the Japanese adolescents. 248 subjects responded to the questionnaire. According to their responses concerning attitude and interest towards religion, the subjects were divided into 6 groups. Results show that anti religion adolescent group tended to be more dogmatic.
著者
川崎 真弘 山口 陽子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.9, pp.1570-1578, 2011-09-01

我々の日常生活における行動の多くは好きまたは嫌いなどの「主観的な好み」に左右されることが多いが,その神経機構については不明な点が多い.そこで本研究では,主観的な好みがワーキングメモリ容量に与える影響とそれに関わる脳波リズムの特定を試みた.19名の被験者に対して,好きな色と好きではない色に塗られた視覚刺激を用いて遅延見本合せ課題を行い,そのパフォーマンスと脳波の変化を調べた.その結果,好きな色を使った図形に対するパフォーマンスは好きではない色に比べて高いことが分かった.また記憶期間中の脳波データの周波数解析は,前頭連合野と頭頂連合野のシータ波(3~6 Hz)とアルファ波(9~14 Hz)が増加する結果を示した.興味深いことに,前頭連合野シータ波は記憶量が増えるにつれて増加するのに対して,頭頂連合野アルファ波は減少した.特に好きな色の記憶期間中にはこの前頭連合野のシータ波に加えて,ベータ波(15~20 Hz)も増加し,好きな色を用いたワーキングメモリ容量増加分と相関することが分かった.以上の結果より,前頭連合野シータ波は負荷が大きい能動的なワーキングメモリ保持に関わること,このシータ波に加えベータ波が主観的な好みに影響を受けることで保持容量が増加することが示唆された.
著者
津田 一郎 西浦 廉政 大森 隆司 水原 啓暁 相原 威 乾 敏郎 金子 邦彦 山口 陽子 奥田 次郎 中村 克樹 橋本 敬 阪口 豊
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

領域の事後評価はAであり、その成果を冊子体の形で集約し、広く社会・国民に情報提供することには大きな意義がある。取りまとめ研究成果は以下のとおりである。1.成果報告書の冊子体での編集と製本を行った。計画班11、公募班44の全ての計画研究・公募研究の班員が、計画班各8ページ、公募班各4ページで執筆し、研究の狙いとその成果を文書と図でわかりやすくまとめた。これらを冊子として製本し、領域に参加する研究者と関係者に配布した。2.成果報告書のCDを作成し、冊子体に添付する形で配布した。3.本成果をWeb上のデータベースDynamic Brain Platformとして成果公開するための準備を完成させた。これまで当領域の成果報告の場として作成公開して来たホームページは、領域終了後に管理できなくなる。そこで、この領域ホームページをINCF 日本ノードDynamic Bain Platform (DB-PF)に移管した。また、成果報告書の電子版をDB-PFにアップロードするための準備を行った。本公開は、広範な分野の人々から永続的な閲覧を可能にするもので、成果を社会・国民に発信する方法として有効であると期待できる。
著者
川崎 真弘 山口 陽子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.1570-1578, 2011-09-01

我々の日常生活における行動の多くは好きまたは嫌いなどの「主観的な好み」に左右されることが多いが,その神経機構については不明な点が多い.そこで本研究では,主観的な好みがワーキングメモリ容量に与える影響とそれに関わる脳波リズムの特定を試みた.19名の被験者に対して,好きな色と好きではない色に塗られた視覚刺激を用いて遅延見本合せ課題を行い,そのパフォーマンスと脳波の変化を調べた.その結果,好きな色を使った図形に対するパフォーマンスは好きではない色に比べて高いことが分かった.また記憶期間中の脳波データの周波数解析は,前頭連合野と頭頂連合野のシータ波(3〜6Hz)とアルファ波(9〜14Hz)が増加する結果を示した.興味深いことに,前頭連合野シータ波は記憶量が増えるにつれて増加するのに対して,頭頂連合野アルファ波は減少した.特に好きな色の記憶期間中にはこの前頭連合野のシータ波に加えて,ベータ波(15〜20Hz)も増加し,好きな色を用いたワーキングメモリ容量増加分と相関することが分かった.以上の結果より,前頭連合野シータ波は負荷が大きい能動的なワーキングメモリ保持に関わること,このシータ波に加えベータ波が主観的な好みに影響を受けることで保持容量が増加することが示唆された.
著者
山口 陽子 McNaughton B.L.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.673, pp.15-22, 1999-03-18
被引用文献数
5

ラット空間探索時に観察されたシータ位相歳差という現象を再検討し、神経振動子のダイナミックスとして位相歳差現象をもたらす神経回路モデル提案する。さらに計算機実験により、この回路が位相コードを用いてエピソード記憶を海馬内に固定する働きをもつことを示す。