著者
鈴木 伸嘉 工 穣
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.6, pp.777-785, 2023-06-20 (Released:2023-07-01)
参考文献数
24

昨今, インフルエンザや COVID-19 などの感染症の流行予測に Social Networking Service (SNS) からのビッグデータを用いる手法が注目を集めている. 感染症の流行と同様に, 花粉の飛散はリアルタイムな気象条件や複雑な外的要因に左右され,それに伴う症状の出現も即時性が高い. そこで, SNS の一つである Twitter に投稿されている花粉症にまつわるツイートは花粉飛散数との関連があるのではないかと考えた. 2022年 2 月 3 日から 5 月22日の間に316,505ツイートを得ることができた. 東京都と松本市のスギ花粉およびヒノキ花粉の飛散数とツイート数との関連を検討したところ, 東京都のスギ花粉飛散数が増えるにつれ花粉症に関連したツイート数が増加し, 両者の相関関係は0.85と強い相関が認められた. 一方地方都市である松本市の花粉の飛散数とスギ花粉症に関連するツイート数との間にもかなりの相関があった. 次に, 花粉症に関連するツイートの内容について形態素解析を行った. 「くしゃみ」, 「鼻水」 といった単語が多く使われているのに対し 「鼻づまり」 の使用数が少ないことが特徴的であった. 一方, 「かゆみ」 や 「かゆい」 といった掻痒感を表す単語が多く使われていることが分かった. 代表的な SNS である Twitter を用いることで, 医学的な現象である花粉症のリアルタイムな動向を把握することができた.
著者
宇佐美 真一 工 穣 鈴木 伸嘉 茂木 英明 宮川 麻衣子 西尾 信哉
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.151-155, 2010 (Released:2011-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
10 8

低音域に残存聴力を有する高度感音難聴患者に対し人工内耳埋め込み術を施行した。症例は60歳女性。40歳頃から難聴を自覚した。50 歳頃からは右耳の補聴器の装用効果が認められなくなった。この症例にMED-EL社人工内耳(COMBI 40+:standard電極)埋め込み術を行った。電極挿入は、より低侵襲な正円窓からのアプローチにより行った。全電極を挿入したにもかかわらず、挿入後の低音部聴力が保存できた。残存聴力の保存が確認できたため、Electric acoustic stimulation用のスピーチプロセッサであるDUET®を用い、低音部は補聴器、高音部は人工内耳により音情報を送り込んだ。8ヶ月後の語音弁別能を評価した結果、術前15%であった最高明瞭度が50%にまで改善が認められ、日本語の聴取においても有用であることが明らかとなった。