著者
青木 一治 木村 新吾 友田 淳雄 上原 徹 鈴木 信治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.197-197, 2003

【はじめに】腰椎椎間板ヘルニア(以下,HNP)患者の下肢の筋力低下は日常よく経験する。しかし,術後それらの筋力の回復過程に関する報告は少なく,そもそも筋力低下が回復するかどうか,どの程度の筋力低下なら実用段階まで回復の望みがあるのかなど,患者への説明に苦慮するのが現状であろう。今回,HNP患者の術後筋力回復経過を調査し,若干の知見を得たので報告する。【対象】手術目的で入院し,下肢筋力が徒手筋力テスト(以下,MMT)で4レベル以下であったHNP患者で,術後経過を観察できた35名(男30名,女5名)37肢,平均年齢40.7歳を対象とした。障害HNP高位はL4/5:25名,L5/S1:10名であった。HNPのタイプは,subligamentous extrusion(以下,SLE)10名,transligamentous extrusion(以下,TLE)17名,sequestered(以下,SEQ)8名であった。手術は全て顕微鏡下椎間板摘出術を行った。【方法】筋力測定は全てMMTで,各被験者につき同一検者が行い,前脛骨筋(以下,TA),長母指伸筋(以下,EHL),腓腹筋(以下,GC)および長母指屈筋(以下,FHL)の何れかに低下があるもので,術後筋力の推移をみた。追跡期間は最長6年で,平均11.1ヵ月であった。【結果】それぞれの筋で経過をみると,TAでは,3,4レベルのものは1ヵ月から6ヵ月の間に多くが回復していた。1,2レベルでは6ヵ月頃までには3,4レベルまで回復するが,その後5まで回復するものは少なかった。また,0の症例では1年経っても1レベルであったが,その後回復を始め,6年後には3レベルまで回復していた。EHLでも同様の傾向があり,1,2レベルのものは1年ほど経過を見ても3,4レベルの回復であった。GCでは,2レベルが境になっているようで,5まで回復するものと,大きな回復を見ないものがいた。FHLもGC同様の傾向であった。このように筋力の回復は,3,4レベルでは術後3ヵ月以内に回復するものが多いが,1,2レベルのものでは6ヵ月から1年の経過を要し,ある程度実用段階まで回復するが,長期間を要する。筋力の回復をHNPのタイプで比較すると,TA,EHLではSEQのもので著明な筋力低下を来しているものが多く,TLEでは0,1のものは予後が悪かった。一方GC,FHLはSEQでも術後の回復は良い傾向にあったが,GCの1,2レベルのものは筋力の回復をみないものもあった。【結語】術前の筋力と比較すると,何らかの回復をみたものが多かった。筋力の回復経過では,術前3レベル以上のものは数ヵ月で回復が期待できることが分かった。1,2レベルのものは,中には4,5レベルに回復するものもいるが,多くは4レベル未満の傾向が強く,完全な実用段階の回復ではなかった。
著者
Devine T.E. 鈴木 信治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-12, 1976-04-25
被引用文献数
1

本研究は,炭そ(疽)病抵抗性がアルファルファの生産力改良に寄与している機作を明らかにしようとしたものである。炭そ病の影響をみるための植物指標として,炭そ病抗抵性を目標に育成した4系統と,それらの母材4品種を供試した。メリーランドの2地点における炭そ病害と秋の霜害の調査結果によると,炭そ病抗抵性と耐霜性は全く一致した関係を示した。これは,炭そ病害のストレスの影響で罹病個体の霜害感受性が増大したためであろう。メリーランドの1地点では,炭そ罹病性が葉を著しく変色させる結果を示した。3地点の成績によると,抵抗性系統は単位区面積当りの株数や茎数が多かった。株当り茎数に対する炭そ病の負の影響は,春,秋いずれの場合も見られなかった。草丈は,抵抗性系統が高い傾向にあった。結論として,抵抗性系統は,炭そ病が発生した後において,単位区面積当りの生存個体数と茎数が多く,草丈が高く,耐霜性が増大する点で優れていた。
著者
杉信 賢一 鈴木 信治 小松 敏憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.318-324, 1989-03-31
被引用文献数
1

イタリアンライグラスの採種栽培における耐倒伏性を高める選抜が有効か否かを確認した。供試材料は第1報及び第2報と同じイタリアンライグラスの直立型で耐倒伏性の強いワセアオバと,中間型で耐倒伏性の弱いワセヒカリ,これに加えて,第2報と同様に両品種とも,耐倒伏性・種子収量・耐倒伏性×種子収量・短密穂・直立葉・下垂葉の形質についての6選抜系統であった。選抜系統の後代種子を,1981年9月中旬に採種栽培試験圃場及び生産力検定圃場に播種した。耐倒伏性選抜系統については,ワセアオバ及びワセヒカリとも1983年9月中旬に採種栽培試験圃場及び生産力検定圃場に再度播種して試験した。倒伏調査は,評点法により1982年は5月4日から6月16日まで5回,1984年は5月11日から6月2日まで5回行った。1982年の結果では,選抜系統及び原品種とも開花後10日目から3週間目ころにかけて,倒伏が著しくなった。ワセアオバでは系統間差及び原品種との耐倒伏性の差が顕著で,特に耐倒伏性選抜系統及び直立葉選抜系統の耐倒伏性が優れていた。一方,ワセヒカリでは系統間差及び原品種との耐倒伏性の差は小さく,6月16日の耐倒伏性×種子収量を除くすべての選抜系統の耐倒伏性が原品種より優れていたに留まった。1984年の結果では,両品種とも耐倒伏性選抜系統と原品種との倒伏程度は著しく異なり,耐倒伏性に対する選抜効果は顕著であった。1982年の結果では,両品種ともいずれの選抜系統も原品種との間に種子収量について有意差は認められなかった。しかし1984年の結果では,ワセヒカリの耐倒伏性選抜系統が原品種より有意に多収を示した。生草収量に関する1982年の結果では,ワセアオバ及びワセヒカリとも選抜系統と原品種との間に有意な差は認められなかった。また,1984年に行った耐倒伏性選抜系統と原品種との比較試験結果でも,ワセアオバ及びワセヒカリとも選抜系統と原品種との間に有意差は認められなかった。以上の結果より,耐倒伏性の選抜はワセアオバでは極めて効果的で,ワセヒカリでもかなりの選抜効果が期待できるが,種子収量に対する選抜効果はほとんど認められない。さらに,耐倒伏性及び種子収量に対する選抜は,牧草収量を高める選抜にとって必ずしも不都合ではないことを例示するものである。
著者
鈴木 信治
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.59-63, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
9
著者
杉信 賢一 鈴木 信治 小松 敏憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.300-308, 1989-03-31
被引用文献数
3

採種栽培時におけるイタリアンライグラスの耐倒伏性を高めるため,この選抜に必要な個体レベルでの耐倒伏性と,関連形質の変異及び相互関係を明らかにしようとした。耐倒伏性が強く直立型のワセアオバと,耐倒伏性が弱くて中間型のワセヒカリの2品種を供試し,検討を行った。1981年8月下旬に播種,10月中旬に圃場に個体植えした材料について,翌年,耐倒伏性,種子収量及び関連形質の調査を行った。両品種とも出穂始めころから倒伏が始まり,登熟が進むにしたがい倒伏が著しくなったが,常にワセアオバがワセヒカリより倒伏の程度が低かった。一方,種子収量はワセヒカリがワセアオバより42.5%高かった。ワセアオバでは耐倒伏性の優れた個体は,出穂日が晩く,出穂から開花までの日数が少なく,草型は直立型で,最上位節間が長く,最太節間径が太く,茎数,二次分げつ茎数・穂数及び頴果数が少なくて,曲げ抵抗が強い傾向が認められた。ワセヒカリで耐倒伏性の優れた個体は,葉の下垂度が大きく,最太節間径が太く,茎数及び二次分げつ茎数とも少なく,穂重/稈重比が小さく,1穂当たりの小穂数が多く,穂重及び1穂当たりの種子重が重い傾向が認められた。ワセヒカリで種子収量の優れた個体は,穂数は多いが,二次分げつ茎数が少なく,穂重/稈重比が大きく,1穂当たりの種子重が重い傾向が認められた。耐倒伏性と重相関の高い形質として,ワセアオバでは最上位節間長,出穂時の草丈,出穂日,草型及び曲げ抵抗の5形質が選択され,ワセヒカリでは曲げ抵抗,出穂時の草丈,最上位節間長,二次分げつ茎数,最太節間径,穂重/稈重比及び葉長の7形質が選択された。種子収量と重相関の高い形質として,両品種とも1穂当たりの種子重と穂数が選択され,これに加えて,ワセヒカリでは,出穂時の草丈,主茎分枝数,最上位節間長及び主茎節数が選択された。耐倒伏性と種子収量との複合形質と関連の強い形質として,両品種とも耐倒伏性及び種子収量自体が選択され,これに加えて,ワセアオバで小穂数,最上位節間長,葉型,出穂日及び上第二位節間長,ワセヒカリで二次分げつ茎数が選択された。以上の結果から,採種栽培において高種子重を保ちつつ耐倒伏性を高めるには,1穂当たりの種子重を高めるとともに,これを支える茎基部の節間径を太くして,曲げ抵抗力の大きい強健な茎を持つ植物を選抜することが有効と結論された。
著者
鈴木 信治 稲波 進 桜井 康雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-41, 1969-04-20
被引用文献数
6

アルファルファの60品種について,'65年と'66年に生育特性を検討し,品種を5群に群別した。その群別経過と各群品種の生育特性は次の通りであった。1.春の草丈伸長経過,草勢,刈取り後の再生,秋の草丈,草勢など14項目の調査形質にそれぞれ著しい品種間差異が認められ,各間の相関も高かった。2.群別の指標としてこれら形質を用い,その分級基準にしたがって区分し,最終的に群別指数を算出した。群別はこの群別指数によって行なった。3.I群品種は直立型で萠芽が早く,秋おそくまで生育し,夏の再生もよい。すなわち環境条件に鈍感な特性をもち極暖地適応品種と推定された。II群はI群ほど極端ではなく暖地適応品種と推定,III群は中間地に適応し,IV群はやや寒地型である。V群は葡伏型で萠芽,再生とも緩慢で刈取り利用期間も短く,環境に敏感に反応する寒地適応品種群と考えられる。4.以上の群別により品種の特性比較が容易になり,従来より幅広く,かつ系統的に暖地適応品種を知り得た。