著者
青木 一治 平野 孝行 太田 智子
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-37, 1989-01-10 (Released:2018-10-25)

健常者132名(男子72名,女子60名)により,等速性筋力計(Cybex II)を用いて,体幹筋筋力(腹筋,背筋筋力)の男女の年代別正常値の決定を試みた。各年代は男女とも20代,30代,40代に分けて行った。また,身長,体重,lever armの長さが筋力に与える影響についても検討した。その結果,男女とも腹筋筋力は背筋筋力よりも弱かった。また,腹筋,背筋筋力ともに女子は男子よりも弱かった。これらはいずれの年代でも同様であった。背筋筋力に対する腹筋筋力の割合は,男子では平均43.6%で,20代が大きく,30代,40代はほぼ同値であった。女子では平均31.6%で,各年代ともほぼ同じであった。身長と筋力は有意な相関はなく,体重は背筋筋力において,男女ともに,体重が増すに従い筋力も増加した。lever armの長さと筋力においては,男女とも,腹筋,背筋筋力でarmの長さが長くなると筋力も強くなるという相関があった。
著者
青木 一治 平野 孝行 寺西 智子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.107-111, 1990-03-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
1

神経根症状のない腰痛患者132名(男子89名,女子43名)につき,等速性筋力計(Cybex II)を用いて,腹筋および背筋筋力を測定した。各年代は男女とも20代,30代,40代に分け,第1報で報告した正常値と比較した。その結果,腹筋筋力は各年代の男女において有意な低下は認められなかった。背筋筋力は,男子では20代,30代,40代ともに有意に低下していた。女子では30代,40代では有意な低下がみられたが,20代は差はみられなかった。背筋筋力に対する腹筋筋力の割合は,腰痛患者のほうが全ての年代の男女で,若干高い値を示したが,有意な差ではなかった。
著者
青木 一治 木村 新吾 友田 淳雄 上原 徹 鈴木 信治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.197-197, 2003

【はじめに】腰椎椎間板ヘルニア(以下,HNP)患者の下肢の筋力低下は日常よく経験する。しかし,術後それらの筋力の回復過程に関する報告は少なく,そもそも筋力低下が回復するかどうか,どの程度の筋力低下なら実用段階まで回復の望みがあるのかなど,患者への説明に苦慮するのが現状であろう。今回,HNP患者の術後筋力回復経過を調査し,若干の知見を得たので報告する。【対象】手術目的で入院し,下肢筋力が徒手筋力テスト(以下,MMT)で4レベル以下であったHNP患者で,術後経過を観察できた35名(男30名,女5名)37肢,平均年齢40.7歳を対象とした。障害HNP高位はL4/5:25名,L5/S1:10名であった。HNPのタイプは,subligamentous extrusion(以下,SLE)10名,transligamentous extrusion(以下,TLE)17名,sequestered(以下,SEQ)8名であった。手術は全て顕微鏡下椎間板摘出術を行った。【方法】筋力測定は全てMMTで,各被験者につき同一検者が行い,前脛骨筋(以下,TA),長母指伸筋(以下,EHL),腓腹筋(以下,GC)および長母指屈筋(以下,FHL)の何れかに低下があるもので,術後筋力の推移をみた。追跡期間は最長6年で,平均11.1ヵ月であった。【結果】それぞれの筋で経過をみると,TAでは,3,4レベルのものは1ヵ月から6ヵ月の間に多くが回復していた。1,2レベルでは6ヵ月頃までには3,4レベルまで回復するが,その後5まで回復するものは少なかった。また,0の症例では1年経っても1レベルであったが,その後回復を始め,6年後には3レベルまで回復していた。EHLでも同様の傾向があり,1,2レベルのものは1年ほど経過を見ても3,4レベルの回復であった。GCでは,2レベルが境になっているようで,5まで回復するものと,大きな回復を見ないものがいた。FHLもGC同様の傾向であった。このように筋力の回復は,3,4レベルでは術後3ヵ月以内に回復するものが多いが,1,2レベルのものでは6ヵ月から1年の経過を要し,ある程度実用段階まで回復するが,長期間を要する。筋力の回復をHNPのタイプで比較すると,TA,EHLではSEQのもので著明な筋力低下を来しているものが多く,TLEでは0,1のものは予後が悪かった。一方GC,FHLはSEQでも術後の回復は良い傾向にあったが,GCの1,2レベルのものは筋力の回復をみないものもあった。【結語】術前の筋力と比較すると,何らかの回復をみたものが多かった。筋力の回復経過では,術前3レベル以上のものは数ヵ月で回復が期待できることが分かった。1,2レベルのものは,中には4,5レベルに回復するものもいるが,多くは4レベル未満の傾向が強く,完全な実用段階の回復ではなかった。