著者
塩澤 真人 戸塚 洋二 鈴木 厚人 中村 健蔵 伊藤 好孝 久嶋 浩之 西川 公一郎 塩澤 真人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、100万トン実験装置のための、安価で高性能な光センサーを開発するものである。13インチのハイブリッド光センサーの試作をし、動作試験から、改良研究を行った。いくつかの問題点が見つかったが、それに対する解決方法を明らかにした。1.高電圧(25キロボルト)印加できず放電してしまう。-->光電面を製造中にセラミック絶縁体を加熱し、耐電圧を向上させる。2.ダイオードの短時間での劣化がおきる。-->新たに5mmφの光ダイオードを開発した。寿命は改善したようである。3.有効面積が小さい(240mm)-->ダイオードの位置と光電面の曲率を最適化することにより、300mmまで改善できることがわかった。4.HPDの構造全体の最適化-->部品の効率化、フランジの強度改善、光電面の曲率の最適化案を作成した。以上の開発により、致命的な技術的困難はなく、大型ハイブリッド光センサーの優れた基本特性と製作可能性が確かめられたと考える。今後の課題としては、生産性の向上のための光センサーと電子回路の最適なデザイン検討と開発がある。また、コスト低減のために、さらなる大型化の可能性の追求も必要である。
著者
鈴木 厚人 井上 邦雄 末包 文彦 白井 淳平 古賀 真之 斎官 清四郎 山口 晃 阿部 浩也 吉村 太彦 橋本 治
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1997

研究代表者が率いるカムランド実験は,中核的研究拠点形成プログラムの支援(平成9年度〜平成15年度)を得て,平成13年度に1000トン液体シンチレータニュートリノ/反ニュートリノ観測装置を神岡鉱山の地下に完成させた。そして,平成14年1月よりデータ収集を開始し,現在継続中である。この間,平成14年12月に,原子力発電所の原子炉から生成される反電子ニュートリノ(原子炉起源)の消失現象を世界で初めて検出した。この現象は,ニュートリノが質量を持つことに起因するニュートリノ振動を強く示唆し,その証拠は次の論文(平成16年7月予定)で公表する予定である。また,原子炉反電子ニュートリノ消失現象の発見に関する論文(Phys.Rev.Lett.90,021802,2003)は,現在までに被引用数537となっており、Thomson ISI Web of Scienceデータに基づくScience Watch誌の最新号(March/April,2004)では本論文は月間被引用数で物理学分野の世界第1位、医学、化学、生命科学・物理学を合わせた総合順位でも世界第2位となっている。本研究では,反電子ニュートリノスペクトルにおけるウラン及びトリウム・ピークの同定による地球反ニュートリノ検出の挑戦も行なわれた。これまでの実験で検出器の充分な性能が示され、世界初の検出が期待されている。実現すれば地球内部のウランやトリウムの存在量、ウラン/トリウム比の測定など地球内部のエネルギー生成機構や地球進化史の解明に不可欠の情報が期待される。また検出器を更に高感度化し^7Be太陽ニュートリノの未曾有の高感度測定を目指した研究が進行中である。