著者
白井 淳平
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.598-602, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6

ニュートリノは物質を構成する最も基本的な粒子(素粒子)の一つである。自然界には大量に存在するが電荷がなく,物質とほとんど反応しないため幽霊粒子とも呼ばれ,その性質は神秘のベールに包まれていた。近年その研究は大きく進展し,興味深い性質が明らかになってきた。その解明には原子炉から大量に放出される原子炉ニュートリノが大きな役割を演じてきた。そして今やニュートリノを用いて地球内部を探る新たな観測方法が現実のものとなっている。本稿では最先端のニュートリノ研究を推進するカムランド実験(Kamioka Liquid scintillator Anti-Neutrino Detector)を紹介し,これまで何がわかったか,そして今後のニュートリノ研究について紹介する。
著者
井上 邦雄 白井 淳平 三井 唯夫
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2009

ニュートリノのマヨラナ性を検証するニュートリノレスニ重β崩壊研究において、巨大・極低放射能環境のカムランドに^<136>Xeを大量導入することで、迅速かつ効率的に世界最高感度での探索を実現した。同各種を使う実験との統合解析により、^<76>Geでの信号発見の主張を排除し、マヨラナ有効質量の上限値120~250meVを与えた。並行して、原子炉停止時のデータから地球ニュートリノ観測を高精度化し、地球モデルの選別を開始するに至った。
著者
鈴木 厚人 井上 邦雄 末包 文彦 白井 淳平 古賀 真之 斎官 清四郎 山口 晃 阿部 浩也 吉村 太彦 橋本 治
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1997

研究代表者が率いるカムランド実験は,中核的研究拠点形成プログラムの支援(平成9年度〜平成15年度)を得て,平成13年度に1000トン液体シンチレータニュートリノ/反ニュートリノ観測装置を神岡鉱山の地下に完成させた。そして,平成14年1月よりデータ収集を開始し,現在継続中である。この間,平成14年12月に,原子力発電所の原子炉から生成される反電子ニュートリノ(原子炉起源)の消失現象を世界で初めて検出した。この現象は,ニュートリノが質量を持つことに起因するニュートリノ振動を強く示唆し,その証拠は次の論文(平成16年7月予定)で公表する予定である。また,原子炉反電子ニュートリノ消失現象の発見に関する論文(Phys.Rev.Lett.90,021802,2003)は,現在までに被引用数537となっており、Thomson ISI Web of Scienceデータに基づくScience Watch誌の最新号(March/April,2004)では本論文は月間被引用数で物理学分野の世界第1位、医学、化学、生命科学・物理学を合わせた総合順位でも世界第2位となっている。本研究では,反電子ニュートリノスペクトルにおけるウラン及びトリウム・ピークの同定による地球反ニュートリノ検出の挑戦も行なわれた。これまでの実験で検出器の充分な性能が示され、世界初の検出が期待されている。実現すれば地球内部のウランやトリウムの存在量、ウラン/トリウム比の測定など地球内部のエネルギー生成機構や地球進化史の解明に不可欠の情報が期待される。また検出器を更に高感度化し^7Be太陽ニュートリノの未曾有の高感度測定を目指した研究が進行中である。