著者
錦織 直人 明石 諭 松山 武 今西 正巳 渡辺 明彦 川口 正一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.484-488, 2008 (Released:2008-08-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

75歳の女性.平成18年8月下旬ヘビに右第1・2趾を咬まれ当院外来受診し経過観察入院となった.腫脹の進行に伴い横紋筋融解症による急性腎不全,高度炎症所見上昇,呼吸状態の悪化を認め,当救命救急センター紹介となった.症状の経過からマムシ咬傷を疑い,受傷後1日半経過していたが抗マムシ毒素血清とセファランチン®を投与した.CPKは112,200IU/lまで上昇していたが抗マムシ毒素血清投与後速やかに正常化した.急性腎不全・呼吸不全と肝機能の悪化を認め,持続血液濾過透析と人工呼吸管理を行った.尿量は受傷後3週目より徐々に回復し,4週目に透析から離脱した.マムシ咬傷による死亡原因は急性腎不全によるものが最多で,その原因は横紋筋融解によるミオグロビン血症やマムシ毒自体の腎毒性等による.急性期に透析・人工呼吸管理等の集中加療を行い救命しえた1例を経験したので報告する.
著者
尾原 伸作 内本 和晃 小山 文一 中川 正 中村 信治 植田 剛 錦織 直人 藤井 久男 堤 雅弘 中島 祥介
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.156-162, 2014-02-01 (Released:2014-02-11)
参考文献数
20

非神経線維腫症I型の患者において,骨盤神経叢由来と考えられた悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor;以下,MPNSTと略記)の1例を経験したので報告する.MPNSTの好発部位は四肢近位部,体幹,頸部とされている.また,MPNSTの約半数は神経線維腫症I型に合併するといわれる.症例は58歳の女性で,当院初診5か月前より肛門痛,左下肢の疼痛が出現した.各種画像検査の結果,骨盤内の直腸左壁に約10 cm大の腫瘍を認めた.骨盤内原発の神経原性腫瘍を疑い,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は骨盤底の後腹膜腔で直腸左側にあり,左骨盤神経叢と固着していた.病理組織学的検査所見では,紡錐形の腫瘍細胞の束状増殖があり,多核な腫瘍細胞もみられた.各種免疫組織染色検査でneurofilamentのみ陽性であった.核分裂像が400倍で1視野当たり7 cells認められ,左骨盤神経叢由来のMPNSTと診断した.術後約6年3か月経過した現在も無再発生存中である.
著者
明石 諭 童 仁 錦織 直人 松山 武 今西 正巳 川口 正一郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.2039-2042, 2006-09-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

症例は85歳,女性で, 2005年11月にS状結腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で穿孔部縫縮術および腹腔ドレナージ術を施行した.ドレーンは左右横隔膜下,ダグラス窩に留置した.左横隔膜下に留置したドレーンより膿汁の排出があったため長期留置していたが,術後24日目に突然の胸痛と呼吸困難感が出現し,ドレーンより多量の排液を認めた.胸部レントゲンにて左気胸を認め,胸腔ドレナージを施行した.ドレーンの胸腔内への突出およびドレーン内排液の呼吸性移動から,気胸の原因は留置ドレーンによる横隔膜穿孔が疑われた.瘻孔造影および胸部CTにて造影剤は胸腔内に流入しているのを確認し,確定診断を得た. ドレーンによる臓器損傷は消化管が多く,横隔膜損傷による気胸の発症は非常に稀である.原因として炎症による組織の脆弱が考えられたが,ドレーン留置による合併症も念頭においてドレーン管理をすべきであると思われた.
著者
竹井 健 中島 祥介 錦織 直人 小山 文一 中村 信治 浅田 秀夫 畠山 金太 大林 千穂 西久保 敏也 藤井 久男
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.342-349, 2016

Muir-Torre症候群は脂腺腫瘍と内臓悪性腫瘍を併発する遺伝性疾患で,Lynch症候群の一亜型と考えられている.症例は61歳の男性で,既往歴は36歳,38歳,46歳,56歳時に大腸癌,50歳時に胃癌があり,家族歴は父と叔父に大腸癌と多数の発癌患者を認め,Lynch症候群を疑い経過観察していた.61歳時に背部に1 cm大の出血を伴う結節が出現し,局所切除術施行し,病理組織学的検査にて脂腺癌と診断した.内臓悪性腫瘍の既往と脂腺癌の併発よりMuir-Torre症候群と診断した.診断後にも計5回の脂腺腫瘍と計2回の大腸癌の発生を認めたが,早期に加療し現在無再発生存中である.また,遺伝学的検査を行い<i>MLH1</i>の病的変異を認めLynch症候群と診断した.Lynch症候群はMuir-Torre症候群を呈することがあり,内臓悪性腫瘍だけでなく皮膚腫瘍も念頭に体表観察を行うことも重要と考えた.
著者
竹井 健 錦織 直人 小山 文一 中村 信治 浅田 秀夫 畠山 金太 大林 千穂 西久保 敏也 藤井 久男 中島 祥介
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.342-349, 2016-04-01 (Released:2016-04-19)
参考文献数
16

Muir-Torre症候群は脂腺腫瘍と内臓悪性腫瘍を併発する遺伝性疾患で,Lynch症候群の一亜型と考えられている.症例は61歳の男性で,既往歴は36歳,38歳,46歳,56歳時に大腸癌,50歳時に胃癌があり,家族歴は父と叔父に大腸癌と多数の発癌患者を認め,Lynch症候群を疑い経過観察していた.61歳時に背部に1 cm大の出血を伴う結節が出現し,局所切除術施行し,病理組織学的検査にて脂腺癌と診断した.内臓悪性腫瘍の既往と脂腺癌の併発よりMuir-Torre症候群と診断した.診断後にも計5回の脂腺腫瘍と計2回の大腸癌の発生を認めたが,早期に加療し現在無再発生存中である.また,遺伝学的検査を行いMLH1の病的変異を認めLynch症候群と診断した.Lynch症候群はMuir-Torre症候群を呈することがあり,内臓悪性腫瘍だけでなく皮膚腫瘍も念頭に体表観察を行うことも重要と考えた.