著者
鎮目 和夫
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1492-1502, 1984-12-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
19

成長ホルモンに依る小人症の治療の対象は, 現在我が国では、所謂下垂体性小人症のみに限られており, ヒト成長ホルモンの大量入手が困難な為, もっとも適応の有る下垂体性小人症に対してすらすべての患者を治療する事が出来ない状態である。しかし, 遺伝子工学によって作製されたヒト成長ホルモンの製剤化も進み, 1~2年の後にはその実用化が可能になる状態となってきた。そこで米国では, 他の原因による小人症の治療に対しても本剤の効果が検討され始めており, 又我が国でも下垂体性小人症に対し, 遺伝子工学で作製されたヒト成長ホルモン剤の臨床治験が行われている。そこで本講演では1) ヒトの下垂体より抽出した成長ホルモンによる下垂体性小人症治療の現況, 2) 遺伝子工学によるヒト成長ホルモン剤の治験の現況, 3) 他の小人症に対するヒト成長ホルモン使用の展望について述べる。第2と第3の問題は, まだ実用面では一寸早いが, 他の分野を専門とする会員へ, 現状を紹介する意味で述べる。
著者
小田桐 恵美 出村 博 出村 黎子 野村 馨 肥塚 直美 成瀬 光栄 鎮目 和夫 田中 芳雄 大内 広子
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1573-1580, 1981
被引用文献数
3

妊娠により臨床症状の著明な悪化をみ,妊娠中絶により臨床症状の改善をみたCushing症候群の1例を経験した.さらに本例について妊娠に伴うCushing症候群の増悪因子についても,若干の検討を加えたので合わせて報告する.症例は満月様顔貌,全身倦怠感を主訴として来院した28才,主婦.昭和47年尿路結石.昭和49年重症妊娠中毒症にて第1子妊娠中絶.昭和51年第2回妊娠中に主訴が増悪したため入院精査.血漿cortisoi (以下F),尿中遊離Fは共に高く日内変動が無く, dexamethasone大量にても抑制の認められない腺腫型の反応を示した.本例の臨床経過は妊娠2カ月頃より徐々に増悪したと考えられ,妊娠中毒症状も高度のため妊娠5カ月にて中絶術施行.中絶後は血漿,尿中遊離F共に急速に下降し,変動していた血圧も140/100mmHg前後に安定.中絶後cushing症候群の妊娠による増悪因子について検討した.まずHCGは血中hormone動態に変化をきたさなかつたが, estrogenでは血圧の上昇,血漿,尿中遊離Fの軽度上昇が認められた.さらに娩出時の胎盤をPayne法にて抽出したところACTH活性が証明された.本例はACTH反応型腺腫であつたが, estrogenとACTHの同時投与による血漿および尿中遊離Fの相乗的増加は明らかではなかつた.以上より本例の妊娠によるCushlng症候群の増悪因子の一つはestrogenであり,その他胎盤性ACTHや妊娠時の種々のfactorが本例の臨床症状をmodifyしたものと推測された.