- 著者
-
長井 圭治
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1999
レーザー核融合に置ける燃料球には、1.低原子番号元素材料からなること2.真球性が高いこと3.壁厚が均一であることが求められ、これまで有機高分子で加工性に優れるポリスチレンによって以上の性能を満たすターゲットが開発され実験に供されている。一方で低原子番号元素材料である有機材料の分野では近年さまざまな機能材料(耐熱性、高弾性率、導電性等)が発見、開発されており、実用に供されているものも多いが、レーザー核融合には活用されていない。以上の状況を踏まえ、次の研究を行い成果を収めた。1.高性能燃料球へ向けた機能性有機材料開発導電性材料、光電子材料ではキャリヤによるプラズマのためレーザー照射による不均一なダメージを抑制し、核融合反応に必要な高密度が期待される。このための材料に関する基礎物性とレーザーアブレーション制御の可能性を明らかにした。1-1.有機光起電力材料として知られるPV/H2Pc積層薄膜の反射スペクトルを初めて明らかにした。1-2.PV膜の蛍光のH2Pc積層による消光測定から、PVの励起子とPV-の強い相互作用を明らかにした。1-3.PV/H2Pc積層薄膜をポリスチレンにコートするとレーザー入射側から、均一に、しかもポリスチレンにダメージを与えることなくアブレーションが起こることを明らかにした。2.エマルジョン法による燃料球の精密作成法2-1.エマルジョン法による燃料球作成における、真球性・均一性発現機構に関して、エマルジョン相間にごくわずかの密度不整合が存在することが、均一性向上に有用なことを理論的に明らかにした。2-2.エマルジョン法による燃料球作成における、溶媒の除去過程において、加熱よりも、水相への溶媒の溶解が律速であることを明らかにした。3.いわゆるフォームハイブリッド爆縮方式は流体不安定性を抑制すると期待されているが、その実験には低密度プラスチックをコートした燃料球が必要である。低密度プラスチックを通常のプラスチックにコートするような、球殻構造に精密化したターゲットを作成し、爆縮実験に供した。