著者
池田 香菜子 長坂 水晶
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.215-229, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
14

本稿では,非母語話者日本語教師を対象にした訪日研修における異文化理解能力育成を目指したプロジェクトワークの実践を報告する。まず,深層文化と異文化理解能力,及び教師の役割に言及した上で,プロジェクトワークに関するこれまでの実践報告を概観する。対象者の言語レベルや先行実践で得られた課題を踏まえ,①協働活動の生まれやすい環境づくり,②文化の観察眼を養う議論の場,③言語的な手当ての3点に重点を置いた段階的アプローチのもと,本実践におけるプロジェクトワークの手順と経過を報告する。アンケート,異文化理解能力に関する自己評価,発表成果物の分析結果から,研修参加者は,授業及びそれに伴う自己の変化を高く評価していることがわかり,発表からは,異文化理解に対する気づきが多く観察された。以上のことから,本実践における段階的アプローチによる活動デザインが有効に機能していたことが示された。
著者
高 偉建 長坂 水晶 Wei-jian GAO Miaki NAGASAKA
出版者
国際交流基金日本語国際センタ-
雑誌
日本語国際センタ-紀要 (ISSN:09172939)
巻号頁・発行日
no.10, pp.51-67, 2000

タイ中等学校日本語教師研修では、アシスタントを導入したプロジェクトワークを取り入れてきた。一般 にプロジェクトワークは運用力の安定し始めた中級以上の学習者に効果的であるとされるが、プロジェクトの一つ「食生活:タイ料理」に関するアンケート結果 から、初級から中級前半の段階にある学習者を対象にした場合でも、学習者は自由に楽しく話せると感じ、プロジェクトワークを日本語の実際使用場面 を獲得する機会として評価していることが分かった。ただし、必ずしも発話量 が普段の教室での授業より増えるという自覚を持つわけではなく、プロジェクトワークは日本語運用力以外の個人の様々な能力を発揮できる異文化接触の機会として評価されたと見ることができる。 また、多くの学習者がプロジェクトワークを自分の授業にも取り入れたいと感じており、教授活動への参考になっていることがわかった。更に、学習者のアシスタントに対する期待が多様であるという結果 も得られた。