著者
亘 明志 Akeshi Watari 長崎ウエスレヤン大学現代社会学部社会福祉学科 Faculty of Contemporary Social Studies Nagasaki Wesleyan University
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-55,

現代のメディア文化において、視覚的要素、とりわけスペクタクルが重要な位置を占めることはいうまでもない。このスペクタクルを、単に「見世物」という限られた意味ではなく、現代社会を構成する基本的な原理として考察したのが、ギー・ドゥボールの『スペクタクルの社会』である。ドゥボールはアカデミックな研究者ではない。レトリスムを標榜する前衛的な映像作家として出発し、都市を中心にさまざまな芸術活動、政治活動を行い、「漂流」「転用」あるいは「状況の構築」といった実践的な概念を作り出していく。こうしてドゥボールは、現代社会を批判的に把握するキー概念として、「スペクタクル」という概念に到達するが、その背景には膨大な実践があるだけに、語義の詮索だけでは十分ではない。そこで、現代のメディア文化をとらえる一つの視点として、(1)ドゥボールの「スペクタクル」という概念はいかにして形成されたのか、(2)現代社会を「スペクタクルの支配」ととらえたときに切り開かれる問題系はどのようなものか、(3)「スペクタクル」の概念をめぐって提起されるあらたな課題はどのようなものか、について考察した。
著者
福留 範昭 亘 明志 Noriaki Fukudome Watari Akeshi 強制動員真相究明ネットワーク事務局 長崎ウエスレヤン大学現代社会学部社会福祉学科 Faculty of Contemporary Social Studies Nagasaki Wesleyan University
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-23,

本稿は、朝鮮人強制動員犠牲者の遺骨およびその返還に関し、主として実地調査および社会運動への参与観察に基づく考察である。現在、日韓政府によって強制動員犠牲者の遺骨返還事業が行われている。しかし、「民間徴用者」の遺骨の返還に関しては、いまだ具体的な方針が立てられておらず遺骨の確認や収集に困難が予想される。戦後60年以上経た現在、記録や人びとの記憶が喪失されつつあり、強制動員犠牲者の遺骨の確認が難しいからである。本稿では、遺骨を探す韓国の遺族の状況(第二節)、日本に残されている強制動員犠牲者の遺骨の実態や遺骨の調査・発掘について考察した(第三節)。そしてこれらを踏まえ、日韓の遺骨返還事業を意味あるものにするために、問題点を指摘した(第四節)。