著者
長瀬 久明
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

重力について思考する場合のマイクロワールドとして次の3つを明らかにした。1 言葉:質量,比例する,速度,など。言葉で思考する。2 数式:万有引力の法則,速度と位置の関係,などについて,式で思考する。3 グラフ:質量(具体例)の位置の変化について,2次元平面,3次元空間で思考する。これに基づいて、次の内容を持つウィンドウが設計された。1 言葉:文字や文節を素材とし,これらを結合し,格文法を用いることにより,文として構成できる。2 数式:変数,演算子を素材とし,これらを結合し,式を構成できる。3 グラフ:2あるいは3実数軸を内容とする。任意の点に質量を置き,時間的な位置の変化を表示できる。これらのウィンドウを用いて可能となる学習活動を明らかにした。マイクとワールドに対応するウィンドウとして,言語表現ウィンドウ,数式ウィンドウ,グラフウィンドウ,アニメーションウィンドウ(学習者に動的なイメージを持たせるために加えたウィンドウ)の4つを開発した。Windows95上でVisual Basicにより実行システムを作成した。学習課題とシステムとを切り離し,システムは純然たるツールとして作成した。これにより,システムは学習者のためのツールであるのみならず,教師が学習者に説明する場合にも使用できるツールとなった。数学への応用を検討した。2次関数について,式,グラフ,および,パラメータ,の3つのウィンドウから操作でき,3ウィンドウが連携して動作するウィンドウシステムを開発した。これにより,相異なる表現(グラフ,言語,など)を別々のウィンドウに表示し,連携動作させる型の学習ソフトウェアが,重力概念(運動方程式)の学習に限らず,知識を生成する学習活動に対して開発可能であることが事例的に示された。上記の研究結果はソフトウェア同梱の報告書として配布されるとともに,インターネットにより公開される。
著者
成田 滋 長瀬 久明 山城 新吾 中村 哲 棟方 哲弥
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、現在大きな社会問題となっている生徒の「確かな学力」を定着させることを課題としている。学力の向上のためには、保護者も教師と同様に家庭や職場などで我が子の学習成果をフォローすることが肝要である。そこで、保護者と教師が教室外での連絡や連携を深めることを目指し、生徒の学習状況や習熟度を互いにモニターしあい、学習の遅れの兆候を発見し、早期に対応する措置を講じるシステムを提案することとした。2か年の研究を通し、遠隔による学習とコミュニケーション支援システムの設計、開発、実験、検証などの研究課題と取り組んだ。(1)学校-家庭間連携支援システムの構築職場や移動先などどこからでもICTを応用して、自分の生徒の学習状況を把握し、「確かな学力」を支援できるようなシステムを設計した。これを「学校-家庭間連携支援システム」と呼称した。ユビキタス遠隔指導システムの主要構成要素は、携帯によるメーリングリスト、web閲覧用ページ、話題の討議の場、評価ページなどである。(2)「ユビキタス遠隔指導システム」の設計と使いやすさのインターフェイスの改良とその効果の検証保護者と教師の連携を支援する携帯メール、メーリングリスト、動画像・静止画像の配信など、携帯電話を利用したユビキタスなシステムを構築しその機能を検証した。保護者からは、授業内容や子供の学習の様子がわかる、といった評価を得た。(3)電子媒体や印刷媒体を利用した保護者と教師とのコミュニケーション方法の長所や短所に関する多角的な検討生徒の学力の向上における両者のかかわりや果たす役割について、生徒情報の提供という観点から総合的に検討した。保護者はおおむね、電子媒体、例えば通常メールや携帯メール、携帯接続のWeb上の子どもの学習ポートフォリオ閲覧などに好意的な意見を寄せた。(4)教室での授業状況の保護者や学校内の教師らへの同時配信と、モバイル動画メールの組み合わせ実験この実験では、サーバ機能と受信者の回線状況の関係、受信者数や画面の大きさが、画質や音質などに及ぼす影響などを分析した。その結果、保護者への配信情報は、利用に耐えることが判明した。ただ、保護者や教師が容易に利用できるための研修が重要な要素であることも課題として浮かび上がった。