著者
富田 哲治 長瀬 隆英
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.440-443, 2001-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
34
被引用文献数
7 9

哺乳類, 昆虫などにおいて感染防御を司る生体内の抗菌物質の存在については以前より知られている. ヒトにおける抗菌ペプチドはディフェンシンと総称され, 細菌, 真菌など広範囲にわたり抗菌活性をもち, このうち粘膜上皮の感染防御に関与しているのがβ-defensin である. 現在, 3種類のβ-defensin が単離・構造決定されているが, human β-defensin-2 (hBD-2) は, 1) 肺, 気管にて発現がみられる, 2) 細菌感染や炎症性サイトカイン刺激にて発現誘導される, という特徴をもっている. そのため, hBD-2は呼吸器感染症により密接な関係をもつことが示唆されている. その抗菌活性機序として従来より細菌細胞膜表面にディフェンシン重合体が孔 (pore) を形成し, 細胞膜透過性を亢進するためと考えられているが, hBD-2ではそれ以外に膜電位への静電気的な関与によるものと考えられている. また発現誘導されるhBD-2の転写活性としてはCD14と Toll like receptors (TLRs) を介してNF-κBを活性化すると報告されている. hBD-2は元来生体で産生されるものであり, 広範囲に抗菌活性を有することより, 今後の臨床的応用が期待される.
著者
山本 寛 長瀬 隆英 新藤 隆行
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

Adrenomedullin(AM)ヘテロ接合体ノックアウトマウス(AMKO)とその同腹子(野生型)を用いてOvalbumin(OVA)腹腔内投与により感作した喘息モデルマウスを作製した。対照群には生理食塩水の投与を行った。マウスを麻酔・人工換気下におき気道内圧、気流を測定し、肺抵抗、肺コンプライアンスを算出した。気道反応性を評価するためメサコリン(MCh)吸入負荷を施行した。その結果、AMKOマウスにおいて有意に気道過敏性が亢進していることが判明した(EC200RL : saline-treated・AM^<+/+>, 16.81±2.01mg/ml ; saline-treated AM^<+/->, 16.73±2.34mg/ml ; OVA-treated・AM^<+/+>, 7.95±0.98mg/ml ; OVA-treated AM^<+/->, 2.41±0.63*mg/ml, respectively, *P<0.05 vs. the other groups)。MCh負荷前後の組織AM濃度を検討したところ、AMKO群ではMCh負荷後のAM濃度が有意に低く、組織AM濃度の不足が気道反応性の亢進に関与している可能性が示唆された。また、肺組織の形態学的解析を行ったところ、OVA感作AMKO群では野生型群と比較して有意に気道内腔が狭窄しており、気道周囲の平滑筋層の面積の増加、気道上皮細胞層の面積の増加もあわせて認められた。したがって、AMの不足が何らかの機序で気道周囲の平滑筋を腫大・増生させたり気道上皮細胞を膨化させるため、結果として気道内腔が狭窄すると考えられた。なお、気道周囲の好酸球浸潤の程度、気道分泌・杯細胞増生の程度、TH1、Th2系サイトカイン、ロイコトリエンについても検討したが、AMKO群と野生型群の間に有意な差は認められなかった。
著者
富田 哲治 長瀬 隆英
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.440-443, 2001
被引用文献数
9

哺乳類, 昆虫などにおいて感染防御を司る生体内の抗菌物質の存在については以前より知られている. ヒトにおける抗菌ペプチドはディフェンシンと総称され, 細菌, 真菌など広範囲にわたり抗菌活性をもち, このうち粘膜上皮の感染防御に関与しているのがβ-defensin である. 現在, 3種類のβ-defensin が単離・構造決定されているが, human β-defensin-2 (hBD-2) は, 1) 肺, 気管にて発現がみられる, 2) 細菌感染や炎症性サイトカイン刺激にて発現誘導される, という特徴をもっている. そのため, hBD-2は呼吸器感染症により密接な関係をもつことが示唆されている. その抗菌活性機序として従来より細菌細胞膜表面にディフェンシン重合体が孔 (pore) を形成し, 細胞膜透過性を亢進するためと考えられているが, hBD-2ではそれ以外に膜電位への静電気的な関与によるものと考えられている. また発現誘導されるhBD-2の転写活性としてはCD14と Toll like receptors (TLRs) を介してNF-κBを活性化すると報告されている. hBD-2は元来生体で産生されるものであり, 広範囲に抗菌活性を有することより, 今後の臨床的応用が期待される.