著者
遠藤 求 望月 伸悦 鈴木 友美 長谷 あきら
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.158, 2006 (Released:2006-12-27)

植物にとって光は重要な情報源であり、発芽や花成などさまざまな生理応答に関わっている。花成に重要な光受容体としてフィトクロムとクリプトクロムが知られているが、これらが実際にどの器官/組織で光を受容し花成を制御しているかは不明であった。これまでに、我々はシロイヌナズナにおいてフィトクロムBは子葉の葉肉細胞で花芽形成を制御していることを明らかにした(Endo et al., 2005)。 我々は今回、クリプトクロム2(cry2)がどこで働き花成を制御しているのかを明らかにした。器官/組織特異的な発現が知られているプロモーターにCRY2-GFP融合遺伝子をつないだコンストラクトを作成し、cry2欠損変異体に形質転換した。また比較のため、CRY2-GFPを内在性プロモーターで発現させる形質転換体も作出した。これらの植物でcry2-GFPタンパク質の発現パターンと花芽形成を調べた結果、維管束でcry2-GFPを発現させた場合にのみcry2欠損変異体の遅咲き表現型は相補され、葉肉、茎頂、表皮、根でcry2-GFPを発現させた場合では表現型の相補は観察されないことが分かった。また組織レベルでの遺伝子発現を調べた結果から、維管束のcry2は花成制御に重要な遺伝子の一つであるFLOWERING LOCUS Tの発現制御を介して、細胞自律的に働いていることが示唆された。
著者
島崎 研一郎 徳富 哲 長谷 あきら
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本特定領域研究では、フォトトロピンやLOV光受容体を研究対象にする生物物理学者、細胞生物学者、植物生理学者など第1線の研究者を一同に会して、光情報受容から様々な生理応答反応へ至る過程を、システマティックに研究してその全体像解明に迫り、この研究分野で世界をリードする事を目的とした。おもに、以下の結果が得られた。1)LOV1ドメインなどの一部の結晶構造を解き、分子全体構造に関しても重要な知見を得た。LOVドメインの光反応はほぼ解明した。さらに、キナーゼの光活性化機構の概略を明らかにした。2)各生理学的応答反応過程に関して、葉緑体光定位運動では、光によるアクチン繊維の再構築が原動力を与え、それに関与する因子が同定されるなど研究の大きな進展が得られた。気孔開口に関しては、photから開口に直接関与する細胞膜H^+-ATPaseへ至る経路の概略が明らかにされた。この研究過程で、アブシジン酸を介した気孔閉口シグナル伝達系とのクロストークが明らかになった。上記光応答反応以外にphotは、葉の太陽追尾運動、葉定位運動、マメ科植物における葉の光誘導性運動、柵状組織の形成、核の運動反応などの光受容体として機能することを発見した。3)新規LOV光受容体オーレオクロムを見つけ、その機能を解析した。以上の成果はPub Medのphototropinをキーワードにした文献検索によれば、2005年初頭より2010年7月までに全世界で総計185報の論文が発表され、この中で本特定領域研究の著者に含まれる論文は61報と、実に3分の1を占めた。班会議を開催し、これまでの成果をまとめた。この5年間の代表的論文を各研究代表者5編以内に限り、冊子体中にまとめた。