- 著者
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長谷 亜蘭
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
摩擦に伴う表面の磁化現象のメカニズムの解明のために,磁束密度測定実験と顕微鏡観察部に摩擦系を組み込んだin-situ観察実験(その場観察実験)の二つの摩擦実験を行った.磁束密度測定実験では,摩擦による磁束密度変化と摩擦面損傷状態などとの関連性を調査した.in-situ観察実験では,摩擦による磁区構造変化を観察し,トライボロジー現象との関連性を調査した.また,磁気力顕微鏡(MFM)を用いた摩擦面の観察・分析を行った.以上の実験を主に純金属材料(Fe,Co,Ni)に関して実施した.本研究で明らかになった点け,以下のとおりである.1)凝着摩耗(移着)による損傷が摩擦表面の磁化と関係している.2)一つの摩耗粒子および微細な摩耗粒子の集合は一方向に磁化する.3)一方向に磁化した大きな摩耗粒子や移着粒子からの漏えい磁場が,周囲の微細な摩耗粒子の磁化に影響を与えている.4)摩擦面上の摩耗粒子および移着粒子が,摩擦磁化の大きな一因である.5)摩耗による移着粒子の生成や弾塑性変形による逆磁歪効果により,摩擦面直下における磁区構造の変化が生じている.6)摩擦前後のMFM像の比較から,摩耗素子のようなナノオーダーで摩擦表面が磁化していることが確認できた.本研究成果より,摩耗素子のような微視的な原因と移着粒子や摩耗粒子のような巨視的な原因が,摩擦磁化現象に関わっていることを明らかにできた.