著者
長谷川 幹子 小林 道太郎
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.10-21, 2019-07-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
58
被引用文献数
1

看護師は、苦悩を抱える患者にかかわらなくてはならないが、その関わり方を考えるにあたって必要となる、「患者の苦悩」の概念の明確化は十分行われていない。本研究の目的は、「患者の苦悩」の概念について、概念分析の手法によって先行要件、属性、帰結を明らかにし、定義を明確化することである。Walker & Avantの手法を参考に、データベースから抽出された文献および関連書籍の36件を対象として分析を行った。その結果、7つの定義属性、7つの先行要件、5つの帰結が見出された。「患者の苦悩」は「全人的で自己の存在そのものに関わるものとして主観的に経験される、不快な感情や情動を伴うコントロール不可能で複雑な耐え難い体験」と定義された。また類似概念の苦痛と比較を行った。本研究の結果は、今後、苦悩する患者に対する看護師の関わり方を考えるため、またそのために必要な調査研究を計画し実行するための基礎となる。
著者
山本 純子 徳珍 温子 小坂 やす子 長谷川 幹子
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.177-186, 2010-03

本研究の目的は,看護学生の就業動機と自己同一性(自分の確立)との関連を検討することである。看護大学生198名を対象に,下山1)の自分の確立尺度と安達2)の就業動機の尺度を使用して調査を行った。その内容は,自分の確立尺度と就業動機の昇順項目の検討をしたうえで,因子分析を行い,両尺度の関連性を把握するために重回帰分析にて検討した。その結果,自分の確立尺度では,自己否定はなく理解してくれる人はいるが,心が傷つきやすく,何事にも不安に思っていることがわかった。また,就業動機の下位尺度から,仕事に対する責任感や上位志向が低い傾向にあることが示された。さらに,2つの尺度間の関連は,説明変数を,自分の確立尺度として学生,祖父母との同居の有無,就業動機を目的変数として分析したところ,以下の項目で有意に関係していた。学生では,主体性(p<0.05),親密性(p<0.01),また,祖父母の同居の有無は,親密性に(p<0.01),さらに,探索志向は,確実性(p<0.001),統制性(p<0.01),挑戦志向では,能動性(p<0.01),親密性(p<0.001)で有意に高く関係していた。つまり,看護学生の就業動機の探索志向の積極的姿勢には,自分と自分の世界に対する現実感や信頼感を持っていることや自我の統合力に関連があることがわかった。また,挑戦志向では,困難な仕事に挑戦し,自己成長しようとする姿勢を自分でコントロールしながら,積極的に関わっていこうとする能力や人との関わりを持ちたいと思う対人関係の柔軟性の関連を示していた。就業動機に関して,受容性および主体性は有意な関連はなかった。