- 著者
-
青木 仁志
伊藤 太乙
長谷川 雄二
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床救急医学会
- 雑誌
- 日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.3, pp.491-498, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
- 参考文献数
- 8
目的:近年,救急医療においては,頭部外傷に対して頭部CTのみで診断している例が散見される。頭蓋内出血の検出に対して頭部CT が第一選択であることは論を待たないが,頭蓋骨骨折を考慮した場合,頭部CTのみの診断で良いのか,その適否について検証を行った。方法:当院(東京都指定二次救急医療機関)を受診した頭部外傷7,126例を対象に後ろ向き研究を行った。頭部X線と頭部CTの頭蓋骨骨折に対する感度を求め,加えて,頭部CTでは検出されにくい頭蓋骨骨折の形態的特徴の分析と,頭部X線を併せて施行した際の被曝量,検査から診断に要する時間の比較検討を行った。さらに,頭部X線を施行せず頭部CTのみで診断する場合の頭蓋骨骨折を見逃す危険度を求めた。結果:頭蓋骨骨折に対する感度は頭部X線が0.99,頭部CTは0.46であった。頭部CTでは骨折の幅と角度によって検出されない形態的特徴が存在した。頭部X 線の被曝線量は頭部CTに比べて低く,検査から診断までに要する時間の延長はみられなかった(CT画像再構成時と比較)。頭部CTのみの場合と頭部X線も併せて施行した場合の頭蓋骨骨折の見逃しの相対危険度は128であった。結論:頭部CTの頭蓋骨骨折の診断能は極めて低く,骨折の幅と角度によっては検出されないことが判明し,頭部外傷をCTのみで診断することの危険性が示唆された。