著者
長谷川 麻衣子
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.301-307, 2017-10-25 (Released:2017-11-08)
参考文献数
27

炎症は,生体侵襲が加わった際に恒常性を維持するための,防御反応である.一方,痛みはさらなる侵襲を回避し治癒のために安静を促す,警告的な感覚である.炎症性疼痛は,炎症によって組織の侵害受容器が刺激を受けて生じる痛みであり,痛みの神経学的分類では侵害受容性疼痛に含まれる.術後早期の創部痛のほか,筋膜や筋・骨格,内臓の炎症など,しばしば原因の除去が困難な慢性炎症を背景とする病態に伴うことが多い.このように“長期化する痛み”という前提で鎮痛の着地点を模索する場合,炎症性疼痛へのアプローチは,生体防御に不可欠な炎症反応と鎮痛を両立させるという,相反する介入を繰り返すことといえる.NSAIDs,オピオイド,局所麻酔薬などの鎮痛薬は抗炎症・免疫抑制作用を有するものが多く,鎮痛目的で炎症を抑えてしまうことにより炎症・治癒過程が遷延し,逆に痛みが慢性化する可能性が示唆されている.炎症性疼痛に用いる麻酔・鎮痛薬の作用機序と,鎮痛以外の薬理作用に関する最近の知見から,痛み以外のアウトカムについて概説する.
著者
水枝谷 一仁 井上 玲央 長谷川 麻衣子 住谷 昌彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の概要は、術後せん妄に続く中枢神経ダメージの機序解明、予防開発のため、同一術式の術後患者を術後せん妄の有無により2群に分け、末梢血液で測定可能な血液脳関門(BBB)の接着因子とその透過性の調節因子、微小循環の調節機構に関連する因子、認知機能と強い関連性のあるメタボリック症候群関連サイトカイン等をリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H)とともに測定し、解析を行い、術後せん妄のメカニズムの解明とそれに基づく診断マーカーの開発及びせん妄に続く中枢神経ダメージを予防する治療開発に繋げる。