著者
関 朋宏
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

申請者は過去3年間を通じて研究課題にあるペリレンビスイミドのJ会合体の構築・内部構造の解明、更にはその機能材料化に取り組んだ。残念ながら、見出したペリレンビスイミド分子の合成が非常に困難であり、内部の構造を詳細に調査できるだけのサンプル量が得られていなかった。しかしながら、これまでに得られた知見を最大限に活かして大量合成が可能な一つの合成経路を確立することに成功し、内部構造の解明および機能材料化を急ピッチで調査中である。一方昨年度までの研究を通じて、ペリレンビスイミド色素においては元来困難とされてきた「塗布法により薄膜形成が可能な二次元層状構造の創製」、および「最低ゲル化濃度が低く透明なゲル材料の構築」に成功した。これらの系の分子レベルでの集合構造を精査し、光学的・電子的特性、および材料特性との相関を明らかにした。前者に関しては、半導体有機エレクトロニクス材料としての応用展開を見出し、溶液塗布法により作成可能な有機薄膜トランジスターデバイスの活性層への適用に成功した。一方後者の系では、ゲルの分子レベルの配列とよりマクロな層構造との明確な相関関係を解明することに成功した。得られた成果は、機能性の色素分子から望みのゲル材料の形態を構築させるための重要な分子設計指針を与えた。本研究を通じて、ペリレンビスイミドの機能化を目指した合成の高収率化、分子レベルの集合構造と光学的・電子的特性との相関の解明、有機エレクトロニクス材料としての有用性の証明に成功した。更なる詳細な調査によって、他の色素材料の構築にも適用可能な分子設計指針の確立が期待される。
著者
関 朋宏
出版者
日本化学会
雑誌
化学と工業
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.254-255, 2015-03

一部の有機結晶は,温度変化や紫外光の照射により結晶内部の分子配列が変化した際に,「ジャンプ」することがある。この現象は,一般に「Salient効果」と呼ばれ,各種エネルギーを瞬発的な動きに変換するアクチュエータへの応用に期待が持たれている。ごく最近までは,Salient効果を示す分子の報告は散発的であり,それらも現象論的な報告がほとんどを占めていた。このような状況下,2013年ごろからNaumovらの研究グループを中心に精力的な研究が展開されるようになった。その結果,結晶がジャンプする際に結晶内で起こる典型的な分子の配列変化およびそのメカニズムが明らかになってきた。本稿では,Salient効果に関する最近の研究動向を概論する。
著者
伊藤 肇 関 朋宏
出版者
Japan Society of Coordination Chemistry
雑誌
Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry (ISSN:18826954)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.3-11, 2013-11-30 (Released:2014-03-20)
参考文献数
70
被引用文献数
1

Aryl gold isocyanide complexes are found to have interesting photoluminescence properties in the solid state, being referred to as luminescence mechanochromism and molecular domino. A gold complex containing two gold atoms, {[pentafluorophenylgold]2(μ-1,4-diisocyanobenzene)}, shows significant change in its luminescence property when mechanical stimulus such as grinding or pressing is applied on its solid sample. This “luminescence mechanochromism” is most probably attributed to a ground state structure change from the microcrystalline to the amorphous state accompanied to the optical properties alternations. Different feature observed in phenyl(phenyl isocyanide)gold(I) complex is “molecular domino”, where even a small mechanical stimulus can trigger the structure change of the entire crystal. This spontaneous structure change proceeded in a single-crystal-to-single-crystal fashion with the drastic emission color alternation. These features enable sub-molecular-level structure investigation with single X-ray crystallographic analysis and visual observation of the phase transition under UV light irradiation during the mechano-induced phase change.