著者
畠山 兵衛 鈴木 金道 飯塚 堯介 中野 準三 右田 伸彦
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.1399-1402, 1967

リグノスルホン酸およびチオリグニンの過酢酸分解において,457mμの吸光度の減少と280mμのそれとの間には比例関係があることに基づき,両リグニンを過酢酸で酸化した場合の淡色化と,各種官能基の含有率の変化および低分子化との関係を考察した。<BR>1.280mμの吸光度に関与する構造型:フェノール性水酸基,カルボニル基および環開裂に由来するカルボキシル基をもっ6種の構造型を選び,これらの構造型を有するモデル化合物の280mμにおける吸光度を測定し,各構造型がリグニンの280mμの吸光度に関与する割合を調べた。各構造型の関与率は合計70%以上を示した。しかし,これらのモデル化合物は457mμにおいて吸光を示さないから,以上の各構造型はそのままの状態では可視部に吸光を示さない。<BR>2.過酢酸酸化および水素化ホウ素ナトリウム還元によるリグニンの色の変化:未処理,酸化処理,還元処理および酸化後に還元処理したリグニンにっいて,C.I.E.のXYZ系でリグニンの色を表示すると,明度は酸化,還元のいずれの処理によっても向上するが,酸化してから還元処理すると,著しく向上する。<BR>3.ゲルロ過法による分子量分布の比較:Sephadex G-25を用い,ゲルロ過法による分子量分布を測定し,過酢酸酸化による変化を検討した。その結果,リグニンの分子量が低下することを認めた。<BR>以上の結果を総括して過酢酸酸化によるリグニンの淡色化には,発色団あるいは助色団となる官能基あるいは芳香核が酸化によって減少することばかりでなく,低分子化も重要であると結論した。
著者
安藤 淳平 松野 清一
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1195-1201, 1965

フロリダ, マカテア, モロッコ, タイバ, ガフサ, コシアなどの一般のリン鉱石を加熱すると, リン鉱石の主体であるアパタイト(結晶粒子の大きさ0.02~1μ)は500℃ 付近でいったん結晶性が低下し,700℃ 以上になると結晶成長を起こす。未焼成リン鉱石のク溶率はアパタイト結晶の大きさや鉱石の品位に応じて65%(ガフサ)から29%(タイバ)の間であり,500℃ の焼成で一部の鉱石は僅かにク溶率が増加し,700℃ 以上の焼成ではいずれもク溶率が低下する。1350℃ の焼成ではコラリソ鉱石(火成岩質)のク溶率(約10%)に近くなる。一般のリン鉱石のアパタイトの格子定数α0は500℃か900℃までの焼成で顕著に大きくなり, 1350℃に焼成するとコラリン鉱石のアパタイトのα0に近くなる。<BR>硫酸とリン酸との混酸による分解速度は,焼成によってアパタイトの結晶が成長してもク溶率の場合ほど変化しない。硫酸との反応で生成するセッコウが鉱石粒子の表面を覆い,このセッ3ウ皮膜が分解性に及ぼす影響の方が結晶の大きさの影響よりも強いからである。焼成によって鉱石中の炭酸ガス分が全く失われると,混酸と混合した場合の鉱石の分散が悪くなって小塊をつくり易く, このため分解率の低下をきたす。<BR>リン鉱石中の有機物の量は鉱石によって著しい差があり,熱分解の様子も異なるが,いずれも900℃ までの焼成で大部分除かれる。リン鉱石の示差熱分析曲線に見られる300~700℃の発熱の量は,鉱石中の有機物の量にほぼ対応している。
著者
下村 脩
出版者
日本化学会
雑誌
日本化学雑誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.179-184, 1960-01

(第2報) 海ホタルルシフェリンの性質および分子式について約5kgの良質な乾燥海ホタルから海ホタルルシフェリンの結晶約70mgをうることができたので, これを用いて吸収スペクトル, 酸化および還元による変化, 呈色反応などについて調べ, 加水分解によって構成成分を知り, また分子量測定および元素分析により分子式を求めた。その結果, 海ホタルルシフェリンの構造中にはイソロイシン, γ-グアニジノ酪酸およびトリプタミンの骨格を含み, 分子式C21H28O2N6・2HClを有することを知った。(第3報) 海ホタルルシフェリンおよびヒドロルシフェリンの推定構造海ホタルルシフェリンおよびその誘導体について前報までに得られた知見をもとにし, あらたにいくつかの実験を行ない, これらに考察を加えて, ヒドロルシフェリンの構造をⅡ, 海ホタルルシフェリンの構造をⅨと推定した。名古屋大学に学位論文として提出
著者
下村 脩 江口 昇次
出版者
日本化学会
雑誌
日本化学雑誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.1434-1439, 1960-09

(第1報) 1,2,4-トリ置換-5-イミダゾロンの合成ならびにその紫外線吸収スペクトル2-メチル-4-ベンジリデン-5-オキサゾロン(Ⅰ)に種々のアミン類を作用させてアミドとし, このアミドを脱水閉環して1-置換-2-メチル-4-ベンジリデン-5-イミダゾロンをえたが, トフェニル置換体の場合にはアミドを経由するよりも, オキサゾロン(Ⅰ)とアニリンの直接反応による方が, はるかに容易に合成できることを知った。また, 2位へのメチル基以外のアルキル基の導入, 4位のイソプロピリデン基の導入, ならびに合成した14種のトリ置換-5-イミダゾロンの紫外線吸収スペクトルについても検討した。(第2報) 5-イミダゾロン類の接触還元ならびに生成物のPKa'4-ベンジリデン-5-イミダゾロン類および4-イソプロピリデン-5-イミダゾロン類をメタノール中でAdamsの酸化白金あるいはパラジウム黒を触媒として接触還元した。酸化白金を用いた場合には 1mol の水素による還元生成物(以下1モル還元物と呼ぶ)を結晶状に得ることはできなかったが, 2モル還元物(5-イミダゾリドン)は15種の化合物を塩酸塩結晶として得ることができた。パラジウム黒を用いた場合には 1mol の水素を吸収したのち還元が停止し, 1-フェニル-2-メチル-4-ベンジリデン-5-イミダゾロンからは mp82度~84度Cの結晶を得た。また, 得られた15種のイミダゾリドンのPKa'を測定して, その結果から5-イミダゾリドン環のpKa'におよはす種々の置換基の影響についての考察を試みた。
著者
武内 次夫 角五 正弘
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1066-1070, 1965
被引用文献数
2

市販ピペッターを用いる熱分解ガスクロマトグラフィーによる合成ゴムの迅速な定性,定量分析に関する研究を行なった。合成ゴムとして, ブチルゴム(IIR),スチレン- ブタジエンゴム(SBR),クロロプレン(CR),アクリロニトリル- ブタジエンゴム(NBR),ブタジエンゴム(BR)を用いた。IIR,SBRを500~700℃ の温度でキャリアーガスの窒素を流しながら熱分解し,再現性について検討した。その結果から,500℃ でIIR-BR(50%IIR)を熱分解し50±4%,700℃ でSBR-BR(50%SBR)を熱分解して50±8%の精度で定量可能であった。つづいてピペッターの最高温度部分に石英ウールを堅くつめて,700℃ でSBR-BRの熱分解を行ない,50%SBRを含む混合物が50±5%で定量できた。そのほか,CR,NBRの500℃ における熱分解生成物をSBRと同様のカラム条件で分析したが,低沸点物が主でピークの分離が悪く,これらの条件での定量は困難であった。
著者
松尾 昭彦 灘谷 和美 中山 充 林 修一
出版者
日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.5, pp.665-670, 1981
被引用文献数
8

苔類に含まれる植物生長阻害活性テルペノイドの研究の一環として,今回マルバハネゴケから4種のセスキテルペノイドが単離され,それらの構造が(+)ニオパリホリエン[1] ,(+)-オバリホリエナロン[2],(+)-オバリホリエナール[3]および(+)-プラギオキリンA[4]と同定された。これらのセスキテルペノイド[1],[2],[3]および[4]はそれぞれ25,250,50および50ppmの濃度でイネ幼苗の生長をほとんど完全に阻止した。その生長阻害効果について詳細な検討を行なった。さらに,生長阻害活性と化学構造の相互関係を研究するために,オバリホリエン[1]から誘導した化合物[5]~[9]の活性試験を行なった。その結果,生長阻害活性はアセチルヘミアセタール部位に依存していることが指示された。α-メチレン-δ-ラクトン[9]は天然産阻害物質[1],[3]および[4]の活性とほとんど同じくらいの活性を有していた。しかしながら,ケトン[2]とγ-ラクトン[8]は低濃度において根の生長を促進した。
著者
佐々木 栄一
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.847-849, 1969

シュウ酸カルシウムを硫酸で分解してシュウ酸と硫酸カルシウムを生成させる場合,生成したシュウ酸がさらに硫酸により分解を受け,ギ酸と炭酸ガス,さらに一酸化炭素,炭酸ガス,水に分解する可能性がある。<BR>著者はシュウ酸を種々の濃度および温度の硫酸中で加熱し,シュウ酸の分解量を測定した。この結果,分解条件60℃,80℃,90℃各1時間においてシュウ酸が分解を起こす硫酸の最低濃度はそれぞれ91%,84%,75%であると推定した。<BR>分解温度50~100℃,硫酸濃度60~100%の範囲においては,温度T(℃),硫酸濃度C(%),分解率F(%)との間には<BR>F=exp[-86.6+0.511C+0.996T-0.0095CT+0.00362C<SUP>2</SUP>]<BR>の関係式が近似的に成立つことを知った。