- 著者
-
関谷 真
- 出版者
- 科学基礎論学会
- 雑誌
- 科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.3, pp.159-165, 1985-12-25 (Released:2010-01-20)
- 参考文献数
- 12
実証は自然科学の基礎となる。実証は経験を基にして, その経験のまとまりから, 法則を含んだ理論が形成される。その意味で, 実証主義は, 経験論の係累にある。その経験的事実から自然現象を説明するとき, 現象の予測が可能となる場合がある。理論の検証は, この予測可能性に負うところが大であり, かつ, 検証は誰でもが可能でなければならない。実証主義においては, 理論構成で用いられる概念は, 形而上的であってはならない上にそこで用いられる概念の定義は経験される事実に限定された定義でなければならない。実証主義の立場をとるか, とらないかは別にして, 経験の積み重ねがわれわれの日常生活に大事な働きをしている。しかし, 経験的事実の範囲を越えた価値にもわれわれはその生活基盤を置いている。未だ実現されていない目的遂行はその一つである。われわれは, 経験を自分の意識でまとめている。その経験はことばによって表わすことができる。しかし, 同時にイメージによる表現も用いている。例えば, 道順の説明に地図とことばの説明を併用すると自分にも他者にも解り易い。ごく一般的に, われわれの日常の相互理解と相互情報交換を通して社会的通念を形成している基礎に, 「ことば」と「イメージ」がある。「ことば」と「イメージ」の生理心理学的分析を試みるのではなく, この一組の事柄がわれわれの認識活動でどういう意味をもっているのかその働きの形式を再確認することをこの論議の主題としたい。生物諸科学が生命科学という総称にまとめられるには, それなりの理由があることであろう。そういう生命科学論がいういろいろな場面で登場する最近の傾向は何がそうさせているのか, それが案外に理解できるという期待もある。