- 著者
-
後藤 明子
中島 厚士
山下 友子
岩村 高志
朽方 規喜
阪本 雄一郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床救急医学会
- 雑誌
- 日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.4, pp.603-606, 2013-08-31 (Released:2013-10-15)
- 参考文献数
- 7
症例は60 歳代の男性。突然の前胸部痛と嘔気を主訴に救急搬送された。来院時は意識清明で,明らかな外傷や神経学的異常は認めなかった。心電図にV2 〜V5 でST 上昇があり,心エコー上,前壁中隔の壁運動低下を認め,急性冠症候群と判断し,緊急心臓カテーテル検査を施行した。左前下行枝Segment 7 の100%狭窄を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行したが,その後,ICU へ搬送中に意識レベルの低下を認めた。頭部CT で,外傷性脳挫傷,両側硬膜下血腫,外傷性くも膜下血腫を認め,PCI 時に使用した抗凝固薬により,血腫が増悪した可能性が考えられた。急性硬膜下血腫に対して,両側頭蓋内血腫除去術,および右広範囲外減圧術を施行したが,その後も意識レベルの改善はみられず,入院11 日目に死亡した。急性心筋梗塞治療後に頭部外傷が判明し,対応に苦慮した症例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する。