著者
石橋 治 阿波根 彩子 中村 正治 盛根 信也 平良 勝也 小倉 剛 仲地 学 川島 由次 仲田 正
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.35-41, 2006 (Released:2018-05-04)
参考文献数
43
被引用文献数
1 3

沖縄島北部において捕獲されたジャワマングース(Herpestes javanicus)133頭およびクマネズミ(Rattus rattus)54頭のレプトスピラ(Leptospira spp.)の保有調査を実施した。その結果,ジャワマングースにおけるレプトスピラの分離率は30.1%であり,クマネズミでは20.4%であった。ジャワマングースから分離したレプトスピラは,抗血清を用いた凝集試験およびflaB遺伝子配列に基づく種の同定により,33株がLeptospira sp.血清群Hebdomadis,内14株はL. interrogans,5株がL. sp.血清型Javanicaおよび2株がL. interrogans血清群Autumnalisと推定された。これまでにも沖縄島のジャワマングースから血清型HebdomadisとAutumnalisは分離されているが,血清型Javanicaを分離したのは今回が初めてである。クマネズミから分離されたレプトスピラは,11株すべてがLeptospira sp.血清型Javanica,内1株がLeptospira borgpetersenii血清型Javanicaと推定された。沖縄島北部のヒトにおける抗体調査では,血清群Hebdomadisに対する抗体の保有率が高く,また,近年この地域から血清型Hebdomadisに感染した事例が報告されている。これらのことから,沖縄島北部において,ジャワマングースがヒトへのレプトスピラの感染環の一端をになっていることが示唆され,クマネズミはマングースへのレプトスピラ媒介動物であることが推察された。