著者
阿部 敬信 長谷部 倫子
出版者
九州産業大学 人間科学会
雑誌
人間科学
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-28, 2020

<p>本研究の目的は,ろう児の第二言語としての日本語の読解力を評価する方法を開発することにある。そのために日本で暮らす外国人児童生徒のための日本語能力の評価である「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント;DLA」の考え方を援用し,Visual-Gestural modeの言語を用いるろう児の適性に応じた手続きをとる評価法とした。それを日本手話・日本語バイリンガル教育を実践しているろう学校小学部のろう児に対して試行することによって,第二言語としての日本語の読解力評価法の構成概念妥当性を検討した。その結果,本評価法の評価ツール〈読む〉では,あらすじ再生や「あらすじチェック」等を行うことで,その解答やテキストの日本語文の読みの実態や課題が個別に明らかにできた。また,語彙数や文型を考慮したリライトされた読み物は,ろう児が,日本語のテキストを読み味わうこと,すなわち読書を楽しむことを学ぶ上で有効であることが示唆された。</p>
著者
阿部 敬信
出版者
九州産業大学 人間科学会
雑誌
人間科学 (ISSN:24344753)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.33-43, 2021 (Released:2021-03-26)
参考文献数
55

本稿では,まず,最初に我が国における聴覚障害教育の成果と課題について,言語指導を中心とする教育方法について整理した。次に聴覚障害教育の教育方法の中で,手話と音声言語の書き言葉によるバイリンガル教育における課題を取り上げた。聴覚障害教育におけるバイリンガル教育において,手話から音声言語の読み書きという,2言語間の転移があるのだろうか。その前提として,そもそもバイリンガル教育という教育方法で教育を受けている,日本手話を母語とする児童らはどのように日本語を読んでいるのだろうか。このことを明らかにするために,適応型言語能力検査(ATLAN)を,日本手話・日本語バイリンガル児童14名に実施した。その結果,公立ろう学校で主に聴覚口話法で学ぶ小学部高学年の児童とほぼ同等の言語能力に発達していた。そして,個別の結果を精査することで,彼らの読解を支えているのは第一言語である日本手話で培ったメタ言語力や背景知識の豊富さに裏付けされた状況モデルではないかと推察した。
著者
尾濱 邦子 阿部 敬信 宮崎 栞恋
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 = Bulletin of Beppu University Junior College (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.36, pp.21-29, 2017-02

本研究は,小学校第5学年児童を対象者として,新規の学習内容について,学習マンガによる教材と,同じ学習内容を文章のみによる説明文による教材を実験材料として用いることにより,学習マンガの教材としての学習内容理解の教育的効果を明らかにすることを目的として行われた。その結果,小学校第5学年の児童に対して,学習マンガによる教材で提示を行った方が学習内容の理解は3週間後まで保持されやすいことが分かった。またその要因として,学習マンガによる教材を用いることで,理解や記憶といった認知的処理が深く行われることが考えられた。