著者
宮腰 哲雄 陸 榕 石村 敬久 本多 貴之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.224-232, 2010-09-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
2

漆は古くから用いられてきた天然塗料で,その塗膜は艶があり優雅で美しいことから器物の装飾や華飾に用いられてきた。ウルシノキは日本や中国に生育しており,それから得られる樹液が漆液である。漆液の乾燥硬化は特殊で,高湿度下でラッカーゼ酵素の酸化作用で進行する。そのため漆液を塗装した器物を乾燥するには特別の設備が必要で,湿度や温度の管理が重要になる。そのことから漆液が自然乾燥する促進法についていろいろ研究されているがまだ本質的な改質に至っていない。本稿では,当研究室で行った漆の改質法としてくろめ返し漆やハイブリッド漆の開発について述べる。また金コロイドを用いたワインレッド様漆塗料の開発,ナノ漆の開発と,それを用いたインクジェットプリンターよる蒔絵製作法の開発など工業塗装への応用研究について概説する。