- 著者
-
雨宮 薫
- 出版者
- 国立研究開発法人情報通信研究機構
- 雑誌
- 若手研究
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
本研究では、訓練による運動習熟が時を経てどのように保存され、適応されていくのかを検討することにある。そのために、まず普段使用することのない運動学習を訓練させ、その後のブランク後にどのように獲得した技能が思い起こされるか、また思い起こされる技能は、最初の技能獲得時の運動技能レベルにどれほどよるのかを検討することを念頭に、初期の運動学習を設定した。この実験では、被験者に普段使用することのない左手の薬指と小指を自己最速スピードで交互に動かす訓練を繰り返し行ってもらった。技能レベルを操作する目的で、自主的に訓練をするグループ、そして受動的にロボットにより介助され訓練をするグループを設けた。通常、受動的な訓練は効果が限定的であることが知られているが、自分の能力を超えたスピードを経験する訓練効果については未だ効果が検証されていない。そこで、自己能力を上回るスピードで受動訓練をうけるSuper passiveトレーニンググループ、自己能力レベルと同じスピードで受動訓練をうけるSelf passiveトレーニンググループを設けることで、技能レベルが操作できるかを検討した。さらに、受動訓練が下方方向にも影響を与えるかを検討するために、自己能力レベルを下回るLow passiveトレーニンググループを設けた。結果、Super passive群は、自主的に訓練するグループの半分の訓練試行数で同等レベルの訓練効果を得ることがわかった。また、Self passive群やLow passive群の訓練効果より訓練効果が高く、受動訓練の直後にパフォーマンスが高くなる傾向が見られた。以上のことは、受動的にうける訓練内容により、パフォーマンスが通常訓練より促進される方向にも、抑制する方向にも影響することを示している。こうして得られた技能差や学習の相違を元に、次はブランクをへての学習の蓄積について検討する。