著者
鈴木 南帆子 青柳 まゆみ
出版者
愛知教育大学特別支援教育講座・福祉講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-19, 2021-03

本稿では、立体・面・線など多様な表現方法を含み、それらの相互の関係性の理解の向上を図る触地図教材を作製し、盲学校の教員へのインタビュー調査を通して、その有効性について検討した。触地図教材は、建物とその周辺環境を対象とし、建物の立体・面・線の表現とその周辺環境の表現の4つの表現方法を含むものである。これら4つの表現方法はそれぞれの関係性をわかりやすくするため、すべて1つの地図盤の上で表現し、磁石による取り外しを可能にした。盲学校の教員へのインタビュー調査では、「変化がわかりやすい」「自分で教材を操作することで関係性がわかりやすくなる」などの意見があった。また、1つの地図盤の上にすべての表現方法を含ませるということについては、7名中5名の盲学校教員から、良いという評価が得られた。以上より、本稿で作製した教材は、地図の多様な表現方法やその関係性の理解を高めることに有効である可能性が示唆された。
著者
岩田 吉生 青柳 まゆみ
出版者
愛知教育大学障害児教育講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.47-56, 2016-03

本研究では,大学の全学共通科目における特別支援教育関連科目の開講状況を調査し,講義内容・形態,指導上の工夫,課題等について検討することを目的とする。尚,研究Ⅰは,日本教育大学協会・全国特別支援教育研究部門の会員が所属する大学71大学(国立大学52大学,私立大学19大学)を対象とし,「特別支援教育に関する講義」の開講状況に関して,「教職に関する教育科目」または「教職に関する教育科目以外」で必修化している国立大学は,40校中22校(55.0%)に上り,国立大学の半数以上で,特別支援教育に関する講義が必修化されていることがわかった。研究Ⅱは,国立大学の3大学の教育学部を対象に,国立総合大学の教育学部における特別支援教育関連科目の開講状況について調査した。その結果,3大学で,特別支援教育を専門とする専任教員によって必修または選択の特別支援教育の講義が開講されていた。特別支援教育が主専攻ではない学生たちも特別支援教育の基礎を学び,理念・教育制度,指導・支援の方法等の理解を深めていることが明らかにされた。
著者
青柳 まゆみ 岩田 吉生
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-31, 2017-03-31

本稿では、教員免許状更新講習を開設している全国の大学および短期大学407校を対象に質問紙調査を実施し、障害のある受講者の受け入れ実態や支援内容、課題等について分析した。障害のある受講者の受け入れ実績を持つ大学は、回答校245校中112校(45.7%)であった。障害のある受講者の総数と受け入れ校数は、平成21年度は54名(30校)であったが、平成26年度には191名(72校)となり、受講者数は3.5倍、受け入れ校数は2.4倍に増加した。障害別では、人数・校数ともに「その他の障害等」の増加が特に顕著であった。設置形態および規模別では、全体的に大規模および中規模の国立大学において受講者の増加が顕著であり、障害者の受け入れと受講上の支援に大きく貢献している様子が伺えた。配慮の内容は障害別で異なるが、講習内容の情報保障、移動介助、試験時の配慮等、基本的な事項を中心に行われていた。
著者
青柳 まゆみ 中村 満紀男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.89-99, 2001-03

本研究では、政府が視覚障害児・者の教育や処遇問題の改善に取り組み始めた19世紀末のイギリスに焦点を当て、当時の視覚障害者の生活実態と社会の期待との関係を究明することを目的とした。主たる資料として、1889年盲・聾等王命委員会報告書の公聴会議事録を用いた。116回の公聴会における150余名の証言のうち、視覚障害者本人と視覚障害者の教育および救済関係者94名の証言を分析の対象とした。19世紀末イギリスにおいて、「経済的自立」は、人が社会の一員として認められるための基本的な条件であった。王命委員会は、視覚障害者の自活を目指した教育の重要性を指摘した。その新しい政策は、救貧費削減という国の利益につながっただけでなく、視覚障害者の生活改善にも大きな影響を与える可能性を含んでいた。一方、完全な自活が困難あるいは不可能であった視覚障害者に対しても、彼らが一定条件を満たしていれば、関係者たちは必ずしも彼らの救済に否定的ではなかった。