著者
志水 廣
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-33, 2016-03-31

小学校の児童が算数を学ぶ上で,算数科にかかわる数学言語(算数語彙)について,どの程度正確に理解しているかについて調査した。調査分野は,小学校高学年,「数と計算」の領域について算数教科書に登場する算数の用語・記号とそれらを規定する言語も含めて算数語彙とした。1つの算数語彙に対して5問の選択肢を用意して児童に選択させる問題(2014年版語彙テスト)を開発した。その語彙テストを716名に実施した。その結果,算数語彙に対して理解度の低い問題が見つかった。例えば,語彙「4この2つぶん」の正答率について4年生は21.5%,5年生は25.9%,6年生は22.9%であった。また,「1を4等分した数」の正答率について4年生は33.3%,5年生は34.2%,6年生は34.4%であった。「いくつ分」「等分」という語彙の指導に配慮を要することが分かった。
著者
志水 廣
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-33, 2016-03-31

小学校の児童が算数を学ぶ上で,算数科にかかわる数学言語(算数語彙)について,どの程度正確に理解しているかについて調査した。調査分野は,小学校高学年,「数と計算」の領域について算数教科書に登場する算数の用語・記号とそれらを規定する言語も含めて算数語彙とした。1つの算数語彙に対して5問の選択肢を用意して児童に選択させる問題(2014年版語彙テスト)を開発した。その語彙テストを716名に実施した。その結果,算数語彙に対して理解度の低い問題が見つかった。例えば,語彙「4この2つぶん」の正答率について4年生は21.5%,5年生は25.9%,6年生は22.9%であった。また,「1を4等分した数」の正答率について4年生は33.3%,5年生は34.2%,6年生は34.4%であった。「いくつ分」「等分」という語彙の指導に配慮を要することが分かった。
著者
福田 博美 後藤 正樹 岡本 陽 山田 浩平 五十嵐 哲也 山田 玲子
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.167-174, 2022-03-29

学校における子供の「おもらし(尿便失禁)」の援助の現状を示し、排泄支援に関する課題を明らかにすることを目的とした。養護教諭の調査から、学校種を問わずほとんどの学校で「おもらし」は起こっており、養護教諭が主たる援助者として対応していた。養護教諭・教諭共に、教員養成段階で「おもらし」の対応は学ぶ機会が少ないという学習の課題があった。さらに、教員の「おもらし」に対する対応の知の蓄積がなされていない課題、医療機関との関係の課題、「おもらし」の片付けのマニュアルが嘔吐の消毒のように作成されていないという感染拡大を予防する危機管理の側面の課題も見つかった。「おもらし」の着替えやお尻を拭くといった子供への対応や汚れた床などの片付けは、十分な時間が無く、人手不足を感じる負担に思う支援であった。今後、排泄に関する学習機会を、養成教育および現職教育において効果的に提供する方法や、科学的根拠に基づいた学校での「おもらし」への支援のマニュアル作りが望まれる。
著者
厨子 健一
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-44, 2018-03-31

本研究はこれまでのわが国におけるSSW研究の動向を確認し,今後SSWが発展していくための課題を提示することを目的とする。論文タイトル284本を対象に,テキストマイニングの手法を用いて分析を行った。結果,頻出150語から,「スクールソーシャルワーク」「スクールソーシャルワーカー」「学校」「教育」「支援」「実践」が上位に挙げられた。共起ネットワークにおいては,主に【他専門職との関係】【SSWer が必要とされる領域】【SSW実践】にまつわるカテゴリーが抽出された。対応分析から,現在は,SSWの現状,効果,全国実態に目が向けられていることが明確となった。以上より,①SSWer の専門性をより焦点化した研究の必要性,②SSWerが必要とされるさまざまな領域におけるアプローチ法の提示,③教育委員会担当者による事業設計・運営の可視化,④実践する上での困難要因およびその対処方法の明確化,4点の課題を指摘した。
著者
鋤柄 圭祐 加納 誠司
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-7, 2018-03-31 (Released:2018-05-22)

本稿は,英語使用論とその前提としての「グローバル化」を問い直すことを通して,総合的学習と小学校英語の有機的な関連に関する議論の基礎を築くことを目的としている。昨今の教育課程改革において,教育課程における位置づけをめぐり,総合的学習と外国語教育の間の論争が続いている。外国語活動における「親しみやすさ重視」の克服,総合的学習の英会話教育化問題の克服という二つの課題の基底には英語使用論の過度な強調があると考えられる。このような英語使用論は「グローバル化」言説と接続しており,英語使用論とその前提としての「グローバル化」を問い直すことで,前述の2点の課題の解決の方向性を探る必要性がある。本稿の結論は次の2 点である。第一にグローバル化する社会を生き抜く子どもたちが育むべき力として,人と人との間に存在するありとあらゆる相違,差異の諸側面を探究していくことこそが学びの基盤になることである。第二に,総合的学習と外国語教育を有機的に関連させることで,グローバル化する社会の中で,差異の諸側面を子どもたちが探究していくことのできる教材,カリキュラムを教師は設計することができ,異文化理解,コミュニケーション活動など教科・領域を超えた総合的・横断的で探究的な学びの中で,子どもたちが自己の生き方を考え自己を再構築していくことのできる学びを提供することができる。
著者
髙﨑 三千代 パラストゥティ ロニ 稲葉 みどり
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.75-83, 2016-03-31

愛知教育大学では、国際交流基金による平成27年度「海外日本語教育インターン派遣プログラム」により、教育学部日本語教育コース1年生1名をインターンとしてインドネシア国立スラバヤ大学へ派遣した。研修を充実したものにするため、双方の大学で連携して指導体制を組み、送り出しから現地での研修、事後の指導までの一連の過程を体系的に行えるような研修プログラムの開発と実践をめざした。プログラムは、「日本語教育研修(教育実習を含む)」「異文化体験」「国際交流・地域交流」の3本の柱を立てて作成した。本稿では、実施したインターン研修プログラム概要の紹介、教育実習の方法、カウンセリング、インターン学生のキャンパス内外での活動・体験に関する報告、プログラム運営面からの報告等を行い、プログラムの役割、成果、課題等を考察した。そして、送り出し側と受け入れ側の双方にメリットのあるプログラムの構築に向けて体制の整備を提案した。
著者
松井 孝彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.175-181, 2021-03-26

本稿は、教育実習の事前演習で行った指導や活動の中から、机間指導に関わる指導及び演習についてその内容と学生の振り返りを報告することを目的とする。筆者は中・高等学校の教員であった頃、授業の目標を達成させるためには机間指導が重要であると考え、その指導を重視していた。しかし、本学附属中・高等学校に勤務をしていた際、教育実習生が机間指導の基礎を理解しておらず、適切に机間指導を行うことができない様子を見てきた。そして、昨年度まで教職大学院の授業内で机間指導の講義及び演習を行ってきた。 2020年度は、かつてない感染症の流行により、教育実習期間が例年よりも1週間短くなった。これに伴い、本学開設の4単位の教育実習において、40時間の時間不足が発生した。そこで、大学で40時間の「教育実習事前演習」を行うことにより、不足した時間を補充することとなった。本稿では、はじめに本学英語選修・専攻の学生に対して行った事前演習全体について説明をする。そして、事前演習内で行った机間指導について、「理論面の指導と学生の振り返り」と「実践演習と学生の振り返り」について報告をする。本稿を通して机間指導力を高めることを目的とした具体的な指導事例と、教育実習の前に机間指導に関する指導を行うよさを示していきたい。
著者
鈴木 一成 中嶋 悠貴 尾関 里都
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.145-151, 2020-03-09

本研究では,「プラごみによる海洋汚染」の対策の一つとして,使い捨てプラスチックの削減に着目した教科等横断的な体育の実践を行い,その実践事例の提示と,そこでの子どもの学びを検討することを目的した。教科等横断的な体育の実践事例は,海洋汚染と絶滅危惧種であるウミガメをテーマとして,①国語科の教材文「ウミガメの命をつなぐ」での学習(1時間),②校外学習としてのESD教育(1時間),③体育科の表現運動の実践(3時間)の構成で,計5時間扱いとした。これらの実践記録を対象として,体育での子どもたちの学びを検討した。その結果,①「他人事」から「自分事」へ,②感受する力(「送り手<受け手」と「自己内対話で一番近い感情を探ること」),溶け込み感覚の3つを検討することができた。
著者
菅沼 敬介 野田 敦敬
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.115-122, 2018-03-31

本稿は,近年叫ばれて久しい子供の自己肯定感の低下を,平成29年3月告示の新学習指導要領で「育成すべき資質・能力の三つの柱」の三つめの視点である「学びに向かう力」との関係性を見出すことで,学校教育や学習活動で自己肯定感を高められるのではないかと仮定し論考したものである。学校教育の中でも,さらに発達段階を児童初期に,核とする教科を生活科に絞って研究を進めた。自己肯定感は,自己への肯定的な評価であり,「自己を全体的に評価し満足しているレベル」と定義されている。これは,理想とする自己像との比較が発達してくる小学校高学年から中学校頃に表出してくるものと考えられているが,その構築は幼児期から児童期初期の原体験や成功体験が関係していると考えたからである。また,子供の自由な発想のなかで原体験や成功体験が充実している生活科こそが,「自己肯定感を高める」のに適した教科である。研究の内容は,先行研究から「自己肯定感の高まる」定義を捉え,生活科の教育課程と「自己肯定感」の関係性を見出した。さらに,これまで自己肯定感の研究で扱われづらかった児童期初期の生活科において授業実践の中で,自己肯定感の高まる子供の姿を具体的に見出す研究である。
著者
小田 奈緒美 淺野 卓司 江島 徹郎 小谷 健司 高橋 岳之
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.93-100, 2016-03-31

本研究の目的は、異なる大学、異なる学習歴を持つ学習者が、協働してICTを活用した学びの実践を通して得られる効果を検討することである。筆者らは、主に2014年度から、教員や保育士の養成の高度化を目指して、愛知教育大と桜花学園大の「協働授業」を実践してきた。まず学部での授業を対象に行い、次に修士レベルでの開講を目指した。2つの大学は離れているので、テレビ会議システム等のICTを活用し、また異なる大学の学習者が同じ体験型学習を共同で行う等し、直接会う機会も設けた。体験型学習は小学校の公開授業への見学とした。これら協働的学びの実践よって、主に以下の3つのことが強く示唆された。(1)学習者は、多様な考え方への気づきがあったことが強く示唆された。これは、異なる大学、異なる学習歴での協働授業による意見交換によるものと考えられ、協働的学びによる効果であると推測できる。(2)一方で、学習者は、協働的学びにおいて、それぞれに共通すると考えられる体験を前提とすることが必要であると考えられた。学習者は、これら共通する体験以外の議論はほぼできなかった。(3)テレビ会議システム等のICTの活用は、ある程度有効に機能した。機器に不調があり、活用できなかった授業の学習者の評価が低かったこと等から推測できる。しかし、こうした不調は、機器の運用等に問題があることも示唆している。異なる大学が連携してのICTを活用した協働的学びには、一定の範囲での効果が期待できることが強く示唆された。
著者
青柳 まゆみ 岩田 吉生
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-31, 2017-03-31

本稿では、教員免許状更新講習を開設している全国の大学および短期大学407校を対象に質問紙調査を実施し、障害のある受講者の受け入れ実態や支援内容、課題等について分析した。障害のある受講者の受け入れ実績を持つ大学は、回答校245校中112校(45.7%)であった。障害のある受講者の総数と受け入れ校数は、平成21年度は54名(30校)であったが、平成26年度には191名(72校)となり、受講者数は3.5倍、受け入れ校数は2.4倍に増加した。障害別では、人数・校数ともに「その他の障害等」の増加が特に顕著であった。設置形態および規模別では、全体的に大規模および中規模の国立大学において受講者の増加が顕著であり、障害者の受け入れと受講上の支援に大きく貢献している様子が伺えた。配慮の内容は障害別で異なるが、講習内容の情報保障、移動介助、試験時の配慮等、基本的な事項を中心に行われていた。
著者
中村 仁志 中野 真志
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2017-03-31

本稿では、教科横断的なカリキュラムに関する議論の源流について論じるにあたり、ジョン・デューイ(Johon Dewey)を取り上げ、彼の学際的カリキュラムの思想形成に影響を与えたシカゴ大学付属小学校、通称「デューイ実験学校」での教育実践に着目する。デューイの学際的教育学の検討から導出される、断片化された知識の再接続と諸学問分野間の接続という二つの主題を分析視角とし、先行研究では十分に焦点が当てられていなかった「総合的な歴史」の具体的な学習および活動に検討を加え、その実態を明らかにする。その際、1900~1901年度のグループ8とグループ9の「実験学校ワークリポート」を分析対象とする。本稿の結論は次の2点である。第一に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は、知識の起源の諸発見の再創造および諸学問分野とそれらが対象とする歴史的・社会的事象との関係から「相関」を問い直すことによる各教科内容の選択・組織化という点で意義をもっていることである。第二に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は知識の起源の諸発見の再創造が強調された結果として自民族中心主義的な側面をかかえてしまっているという課題を指摘できることである。これらの結論が持つ含意は、知識の起源の諸発見の再創造と自民族中心主義的な側面の克服の両立を図りつつ、教科横断的なカリキュラム全体の知識の構造化の基盤となる歴史学習のカリキュラムをいかに創造するかを問うことである。