著者
須藤 邦彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.171-178, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
40
被引用文献数
3

本研究では,近年の自閉症スペクトラム障害(ASD)における応用行動分析学をベースにした実践研究の動向を明らかにした。2012年から2017年までの国内における応用行動分析に関連した学術雑誌を対象とした。まず,(a)ASDを対象とする,(b)何らかの介入を行った研究などの規準を満たす論文を抽出した。次に,(a)執筆者や支援実施者の特徴,(b)支援の場,(c)支援対象者の人数と年齢,(d)標的行動,(e)維持と般化,(f)研究デザイン,(g)支援の文脈適合性と社会的妥当性,という7つのカテゴリに分類した。その結果,執筆者や支援実施者に教員や保護者のような関係者が含まれている論文が多く,支援の場についても,全体の69%が教育機関,自宅,施設,あるいは地域であった。また,支援の文脈適合性と社会的妥当性による連携を関係者と行っている論文も多かった。標的行動については,対人コミュニケーションや問題行動がどの年代においても多く該当した。ASDの実践研究において,教員や保護者のような関係者と丁寧に連携している研究のエビデンスが蓄積されていく必要性が示唆された。
著者
須藤 邦彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.268-277, 2008-06

本研究では,1名の自閉性障害児を対象に,困難な状況にある他者を援助する行動を獲得させ,援助行動を生起させるための様々な弁別刺激の効果を検討した。ここでは,援助行動を生起させるための弁別刺激を,(1)相手から援助を要求される言語刺激(言語刺激条件),(2)相手の物品の不足という状況刺激(状況刺激条件),(3)相手から援助を要求される言語刺激と観察反応を自発させる刺激(複合刺激条件),という3点で統制した。その結果,言語刺激条件や状況刺激条件のみならず,複合刺激条件においても標的行動が生起し,それが維持・般化した。このことから,自閉性障害児が,言語刺激や状況刺激のような手がかりだけでなく,観察反応を自発させる刺激のような援助者自身に属する手がかりを援助行動の弁別刺激として利用できる可能性が示唆された。また,これらの刺激を複合して,より高次な援助行動を生起させることができることも推察された。