著者
三神 彩子 赤石 記子 飯村(久松) 裕子 長尾 慶子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>【目的】</strong>物の購入や消費にかかわる消費生活の分野は,身近な問題でもあり,小・中・高の家庭科教育の中でも重要な分野である。さらに,食品の選択は食分野の教育においても欠かせない。しかし,調理実技と異なり,食品の選択は講義だけで済まされることも多く,実践が難しい。<br /> これまでの調査研究から,買い物,調理,片付けを通した食生活における省エネ行動に関する教育を行った場合に,買い物に関しての教育効果(意識変容や行動変容) が調理や片付けと比べ,得にくいことを明らかとしてきた。<br /> そこで,本研究では,買い物を擬似体験できるゲームを開発し,授業等で活用することとした。合わせて,大学生を対象とした授業及び中学校家庭科教員を対象とした研修で活用し,教材としての可能性を検討することとした。<br /><strong>【方法】</strong>買 い物に関する5項目の省エネ行動,「環境にやさしい商品を選ぶ」「必要な量だけ買う」「旬の食材を購入する」「買い物袋を持参し必要のないものを断る」 「食材を選ぶ際に簡易包装のものを選ぶ」について,教育前の認知度及び教育前後の実践度の変化を調査し,行動の阻害要因を明らかとした。<br /> 合わせて,小・中・高等学校で使用している教科書をもとに,環境に配慮した消費者教育に資する教材とするため盛り込む必要のある要素を抽出し,ゲームに反映させた。<br /> 次 に,T大学3年生「食教育の研究」授業履修者(2015年度65名,2016年度44名)を対象とし,ゲームを導入していなかった講義のみの2015年度 とゲームを導入した2016年度の授業前後の意識及び行動変容効果を調べるためアンケートを行った。合わせてH市中学校家庭科研修会にて活用し,ゲームの 教材評価を行った。<br /><strong>【結果】</strong>調査結果から,認知度と実践度の間には相関関係は見られなかったものの,環境に良 い理由や具体的な方法を理解していない等,理解度に差があることが阻害要因の1つとなっていることが明らかとなった。また,教科書等の記載状況を鑑み,環 境に配慮した消費者教育に資する教材とするためには,金額,容器包装,旬,地産地消,必要量に関して,選択理由と選択方法を具体的にゲームに盛り込むこと が重要であることを確認した。<br /> ゲームは,実際の買い物が想起できるよう,学生にもなじみのあるカレーライスとオムライスを作ることを想定し,店員 と消費者に分かれ,1,600円の所持金額の中で疑似買い物体験をするという設定とした。ゲームセットの内容は,はがき大のカードを使用し,実際の食材の 写真に,本物に即したラベル等を組み合わせたものとした。カードの表面には商品の情報,裏面には領収書を作成する際の選択のポイント等を表記した。開発し たゲームセットには,カード(ルール・買い物リスト・食材・レジ袋カード),領収書,買い物かご,電卓等が含まれる。<br /> 教育前の認知度及び実践度に関しては,2015年度及び2016年度ともにほぼ同様の傾向がみられた。一方,教育後の実践度を見てみると,2016年度のゲームを導入した教育では,「いつも実行している」人の割合がいずれの項目でも有意に増えていることが確認できた。<br /> ゲー ム終了後の振り返り発表の中の感想からも,「値段だけでなく,地産地消や,有機栽培かどうか等に気を付けることの意味が分かった」「安いという理由でセッ ト販売のものを買いがちであるが,余らせて捨ててしまうことを考えると必要な量を買うことがよいと思った」「たくさん販売されているものが旬のものと思い がちだった」「簡易包装が良いことは分かっていても何を選ぶと簡易包装になるのかがよく理解できた」等の声が聞かれた。このことから,情報提供の講義だけ の2015年度と比較し,理屈としては理解していても実際の買い物時に迷うことが多かった点に関し,ゲーム体験により,自信をもって日常で実践できるよう になったのではないかと推察された。<br /> また,教員研修の結果からも,すぐに使える教材であるとの評価を得た。特に,意図していた消費生活や環境の分野,食品の選択の授業で活用したいといった回答が得られた。
著者
谷口 明日香 丸山 里菜 京極 奈美 渡辺 裕子 飯村(久松) 裕子 長尾 慶子 小林 理恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.157, 2017 (Released:2017-07-08)

【目的】近年、雑穀粉の健康機能性に注目が集まっているが、これらはグルテンを形成しないため、調理への利用用途は限定的である。しかし、小麦粉のグルテン形成を抑制しながら揚げ加熱する天ぷら衣には利用の可能性が高い。そこで、小麦粉以外に天ぷら衣として利用例がみられる主穀のうるち米粉・もち米粉と共に、雑穀の大麦粉・ソバ粉・ハトムギ粉を用いた天ぷら衣の力学特性並びに外観及び吸油量とから客観的に嗜好性を評価した。【方法】各穀物粉15 gに、小麦粉の粘度と同程度となるよう加水し、バッターを調製した。これを直径30㎜×高さ10㎜のシリコンカップに2.0mLずつ分注し180±5℃に熱したキャノーラ油600 mLにカップごと投入して140秒間揚げ加熱した。各揚げ衣は1分放冷後、重量、表面色(L*, a*, b*値)、破断強度を測定した。また、各揚げ衣5 gに付着した油を石油エーテルで抽出後、40℃で蒸留して吸油量を測定比較した。【結果】揚げ衣の圧縮初期の応力及び微分値を比較すると、その硬さはうるち米粉・ハトムギ粉>大麦粉>ソバ粉となり、うるち米粉、ハトムギ粉、ソバ粉は小麦粉に比べて吸油量が少なかった。雑穀粉の揚げ衣の色は、主穀粉に比べて暗褐色であったが、特にソバ粉では濃い灰褐色を呈していた。天ぷら衣は淡黄色でもろく軽い仕上がりが望ましいことから、雑穀の大麦粉及びハトムギ粉は天ぷらの衣として小麦粉と代替えできる可能性が高い。