著者
飯田 真理子 片岡 弥恵子 江藤 宏美 田所 由利子 増澤 祐子 八重 ゆかり 浅井 宏美 櫻井 綾香 堀内 成子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.73-80, 2018-06-29 (Released:2018-06-29)
参考文献数
14
被引用文献数
4

周産期を通して安全で快適なケアを提供するには助産実践指針が必要である。日本助産学会は健康なローリスクの女性と新生児へのケア指針を示した「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」を刊行した。この2016年版は2012年版に新たに妊娠期の臨床上の疑問(Clinical Question,以下CQ)を13項目加え,既にある分娩期のCQ30項目には最新のエビデンスを加えた。このガイドラインでは助産実践を行う上で日常助産師が遭遇しやすい臨床上の疑問に答え,ケアの指針を示している。推奨は最新のエビデンスに基づいているため,ここに示している内容は現時点での“最良の実践”と考える。本ガイドラインに期待する役割は次の3つである:1)助産師がエビデンスに基づいたケアを実践し,女性の意思決定を支援するための指針としての役割,2)助産師を養成する教育機関において,日進月歩で進化していく研究を探索する意味を学び,知識やケアの質が改善している事実を学ぶ道具としての役割,3)研究が不足し充分なエビデンスが得られていない課題を認識し,研究活動を鼓舞していく役割。そして本稿においてガイドラインの英訳を紹介する目的は次の通りである:1)日本の助産師が編纂したガイドラインを世界に紹介・発信すること,2)日本の研究者が英語で本ガイドラインを引用する際の共通認識として用いること。2016年版では,合計43項目のCQに対して推奨を示しているが,次の6つに関しては産科領域で広く用いられているものの,医行為に関わるため推奨ではなく「エビデンスと解説」にとどめている:CQ1分娩誘発,CQ2卵膜剥離,CQ7硬膜外麻酔,CQ21会陰切開,CQ26会陰縫合,CQ28予防的子宮収縮薬投与。2012年版から推奨が改訂されたCQは次の通りである:CQ3乳房・乳頭刺激の分娩誘発効果,CQ9指圧,鍼療法の産痛緩和効果,CQ14指圧,鍼療法の陣痛促進効果。なお,本論文の一部は「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」からの抜粋であり,推奨の部分は翻訳である。
著者
飯田 真理子 新福 洋子 谷本 公重 松永 真由美 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.187-194, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
20

HUG(Help-Understanding-Guidance)Your Baby育児支援プログラム(以下HUGプログラム)は米国,ノースカロライナ州のファミリーナースプラクティショナーであるJan Tedder氏により開発されたプログラムである。このHUGプログラムは,新生児を家族に迎えたばかりの両親に分かりやすく新生児の行動を説明し,育児のスキルを伝え,両親が児の行動を正しく理解し,出産後に肯定的な育児行動を継続することを目標としている。今回HUGプログラムを日本において実施するにあたり,日本語版の教材を作成しプログラムを開発したので,その内容を報告する。作成にあたり,原版開発者との協働で英語版HUGプログラムを日本語へ翻訳した。英語版を研究者らが日本語へ翻訳し,そのバックトランスレーションが行われ,英語のプログラムとの内容妥当性を確認された日本語版HUGプログラムを開発した。翻訳した教材はHUGプログラム内で使用するスライド,2つのスキルを紹介したリーフレット,母乳育児の道のりを示したリーフレット,新生児の行動をまとめたDVDである。HUGプログラムの構成は次の通りである:育児に使える2つのスキル「新生児のゾーン」「新生児の刺激過多の反応」の紹介,新生児が示す刺激過多の反応への対処方法,順調な母乳育児のコツ,2つの睡眠パターンの紹介である。そしてその後はおくるみと赤ちゃん人形を用いたおくるみレッスンと育児経験者から子育ての苦労やヒントを聞く,という構成である。HUGプログラム内で使用している教材は参加者に配布し,自宅で繰り返し活用できるようにしている。現在はプログラムの目標の達成度を測定している。参加者の反応等の分析を経て,日本の子育て文化を考慮した日本語版HUGプログラムの更なる発展と普及に向けて,教育活動を続けていく予定である。