著者
陳 虹 上野 幸三 養父 佐知子 高橋 円 坂本 泰寿 飯倉 洋治
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.645-650, 2001-12-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

近年食物アレルギーは世界中で大きな問題になってきている.人間の多くの器官が食物アレルギーによって障害を受けることはよく知られているが, その予防及び治療は, 今後の研究を待つところも多い.我々は補中益気湯を用いて, 食物アレルギーモデルマウスの肝臓障害に対する治療効果について検討を行った.まず, Hyper IgE血症を自然誘発するNc/Jic系マウスを卵白アルブミン (OVA) によって感作した.その後, それぞれに補中益気湯と生理食塩水を投与し, 肝臓における, 肝細胞の病理変化と細胞浸潤の有無について検討を行った.OVAを経口で負荷後, 血清のalanine aminotransferase (ALT) 値を酵素法 (POP) で測定した.サイトカインの検討は免疫染色 (streptavidin-biotin) 法で分析した.その結果, 補中益気湯内服マウスは, 生理食塩水投与の対照群と比べ, 血清ALT値が有意に減少していた.また, 補中益気湯内服マウスの肝臓におけるIL-4, IL-6, TNF-αの陽性細胞数は, 生理食塩水投与の対照群より有意に低かった.この結果から, 補中益気湯が肝臓のアレルギー反応を減少させ, 食物アレルギーによって起こされた, 肝臓障害を抑えることが示唆された.
著者
養父 佐知子
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、リウマチ様関節炎を自然発症するHuman T cell Leukemia Virus Type I (HTLV-1) 遺伝子導入(Tg)マウスに核酸・核タンパク(NP)1.2%含有餌を3ヶ月間摂取させた。その結果、関節肥大、組織の増悪抑制や、NO酸化代謝物(3-ニトロチロシン)の低下が認められた。さらに、電子スピン共鳴法(ESR)を用いてNPが一重項酸素およびNO消去能を示すことをin vitroの実験で明らかにした。しかし、生体内に摂取された後のNPのフリーラジカルに対する作用は不明である。そこでリポポリサッカライド(LPS)誘導性肝傷害モデルマウスを作製しNP摂取の作用を調べた。その結果、NP摂取は過剰産生されたNOを直接消去するだけでなく、クッパー細胞の活性化抑制やiNOSタンパクの発現抑制により肝傷害を改善することが明らかとなった。