- 著者
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饗場 和彦
- 出版者
- 徳島大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
日本がPKOや難民支援のために自衛隊を送ったのは1992年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)が初。以後、モザンビーク、ルワンダ、ゴラン高原(シリア・イスラエル)、東ティモールと派遣され、イラクにも特別措置法に基き2003年末から派遣されている。本研究ではこうした自衛隊の活動の実態を検証し、課題を分析、考察した。東ティモールはすでに終了し、イラクは治安が改善しないため現地調査に入れなかったが、ゴラン高原は現地調査を実施し、国内ヒアリングなどを行った。成果としての主な知見は、まず致命的弱点としての現地における適応障害の存在、である。自衛隊は憲法との関係上、宿命的に「軍隊でないこと」を条件付けられているが、PKOをはじめ紛争地における平和構築支援としての活動においては「軍隊であること」を求められるため現場では大きな乖離、矛盾が発生、しわ寄せは現地の自衛隊員に行っている。また、海外における自衛隊の活動の「性質」についての区別、も重要。自衛隊の海外活動は、概念としては、a)日米同盟の観点から日本の安全保障という国益を図る性質の強い活動と(日米同盟のための海外派遣)、b)国連などの多国間協調の観点から国際社会の公共益に資する性質の強い活動(国際社会のための海外派遣)、とに区分でき、この視点を区別しておかないと自衛隊の海外派遣は軍事主義としての危険性をはらむ。さらに、民軍関係の問題も大きな課題としてある。近年の平和構築支援の活動では軍事組織と文民組織が共同して当たる形が多いが、そこでの両者の関係のあり方、協働の仕方は功罪両面あり、自衛隊としても早急に検討され対応されねばならない課題である。