- 著者
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馬場 昌範
西條 政幸
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
平成 29 年度までの研究により,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因ウイルスである SFTSV に対する in vitro 抗ウイルスアッセイ系を確立し,それを用いた薬剤のスクリーニングにより,アモジアキンに選択的な抗 SFTSV 効果を同定した。さらに,種々のアモジアキン誘導体について,それらの抗 SFTSV 効果を検討したところ,アモジアキンと比較して,抗ウイルス活性が 10 倍程度高い新規誘導体(# 90)を同定することに成功した。そこで,平成 30 年度の本研究では,# 90 について,研究代表者が in vivo 実験用に必要な量の薬剤を準備するとともに,研究分担者が国立感染症研究所において SFTSV に感受性を有する1型インターフェロン受容体ノックアウトマウスを用いた in vivo 投与実験を行った。その結果,SFTSV 感染マウスに対し,# 90 の最大量(100 mg/kg)の経口投与群においても,非投与群と比較して,有意な致死率の減少をもたらさなかった。一方で,非感染マウスの最大量投与群においても,体重減少などの有害事象が全く認められなかったため,# 90 については in vivo における薬物体内動態(経口吸収性など)に問題があるのではないかと思われた。そこで # 90 の体内動態を改善することを目的に,原体から塩体(塩酸塩)への変換を行った。次年度は #90 塩酸塩を用いて,in vitro 活性試験および in vivo 活性試験を行う予定である。また,本研究から派生した研究成果として,米国のテキサス・バイオメディカル研究所の BSL4 施設を用いた国際共同研究を実施し,# 90 に強い in vitro 抗エボラウイルス効果を有することも明らかにした。