著者
久保 智之 馮 蘊澤 早田 輝洋
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

研究代表者の久保智之は、満洲語口語(中国新疆ウイグル自治区のシベ語と、同黒龍江省で話されている満洲語口語)について、特に音韻論的、形態論的な側面において、満洲語文語との異同を研究した(シベ語も満洲語口語と言ってよいが、ここでは黒龍江省の満洲語口語と区別するため、便宜的に黒龍江省の満洲語だけを「満洲語口語」と呼ぶ)。シベ語、満洲語口語とも、語幹と接辞の間の母音調和が消失している。シベ語はそれが、語幹と接辞の間の子音の調和にとってかわられている。シベ語は、/k/と/q/、/g/と/G/、/x/と/X/の対立をもっている(おそらく満洲語文語とおなじ)が、満洲語口語は、それらの対立を失なっているようである。満洲語口語は/r/と/l/の対立も失なっている。総じて、シベ語に比べて満洲語口語のほうが、満洲語文語との隔たりが大きいように思われる。研究分担者の早田輝洋は、『満文金瓶梅』の電子化テキストを使用し、満洲語文語の研究を進めた。満洲語文語の母音について考察を進め、5母音とするのが妥当であるという結論を得た。また、『満文金瓶梅訳注第十一回-第十五回』を公刊した。満文のローマ字転写及び訳注から成る。さらに、標準的でない語形を多く含む『大清全書』の電子化テキストを作成し、索引と共に公刊した。満洲語の音韻論的研究に裨益するところ大であろう。同じく研究分担者の馮蘊澤(平成11年度〜12年度に参加)は、早田の作成になる『金瓶梅』崇禎本のデータベースを用いて、文法形態素「得」に関わる統語現象の分析を進めた。現代語との比較対照も行なった。