著者
李 秀華 五島 瑳智子 村井 貞子 小林 明子 辻 明良 高 細水 胡 尭蒙 〓 玉秀
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.611-618, 1999-10-25

中国の病院関係者における<I>Staphyloococcus auresus</I>の保菌状況を調べることを目的とし, 1996年, 1997年に中国4省4都市7病院で, 健康者25人と入院患者25人を対象に咽頭と鼻前庭粘膜から<I>S. aureus</I>を分離した。分離株の血清型別および薬剤感受性を調べ, 1996年に行った東京の1病院の成績と比較した。<BR>1) 中国7病院での<I>S. aureus</I>の分離率は4%~25%であり, 東京の1病院での41.2%に比べ有意に低率であった。<BR>2) 健康者からの<I>S. aureus</I>の分離率は入院患者よりも高く, 健康者では医療従事者の方が一般人に比較し高い分離率を示した。また, 咽頭からの分離率が鼻前庭に比較して高かった。<BR>3) 中国7病院で分離された<I>S. aureus</I>の血清型はコアグラーゼVII型がもっとも多く, エンテロトキシン型は一定ではなかった。これに対して日本の1病院から分離された<I>S. aureus</I>42株のうち12株がコアグラーII型, エンテロトキシンC型であり, これらはすべてMRSAであった。<BR>4) 抗菌薬感受性について, 中国7病院での分離株はimipenem, panipenemに対する感受性が高く, tetracycline, erythromycin, roxithromycin, azithromycin には低い成績を示したが, MRSAは分離されなかった。一方, 東京の1病院では42株中17株 (40.8%) がMRSAであったが, すぺての菌株がarbekacinに4.0μg/mL以下, vanoomycinに2.0μg/mL以下のMICを示した。<BR>中国7病院と東京の1病院で分離された<I>S. aureus</I>の各種抗菌薬に対する感受性パターンの相違は, これまでの両国における感染症と治療法の差および医療体制の違いによるものと考えられるが, 西洋医学が急速に導入されている中国において, 今後の薬剤耐性菌の推移を検討する基礎資料となるであろう。