著者
高安 肇 田中 潔 武田 憲子 渡辺 栄一郎 渡邊 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.66-70, 2014

女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
著者
高安 肇 山岸 純子 大谷 祐之 石丸 由紀 池田 均
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.6-10, 2006
被引用文献数
2

【目的】小児の予定小手術に際し実施すべき術前検査に関する一定の基準は示されておらず, 検査の内容は施設ごとに相違がある.今回, 小児の予定小手術における術前ルーチン検査の有用性および必要性について検討を行った.【対象と方法】全身麻酔下の予定小手術を目的に入院した1,005例の1,069回の入院を対象に, ルーチンに実施された術前検査の異常の有無と, 手術の中止(延期)ならびに周術期合併症に関し後方視的に検討した.【結果】入院後の手術中止は33回(33例)(3.1%)で, その理由は感冒症状が29例, 乳児肝炎, 鉄欠乏性貧血が各1例, 社会的理由が2例であった.乳児肝炎と鉄欠乏性貧血の症例は術前検査でそれぞれトランスアミナーゼの高値と貧血を指摘され手術が中止された.CRPの高値10例も手術が中止になったが, 全例感冒症状をともなっており, CRPのみを理由に中止された症例はなかった.尿検査, 胸部X線および心電図の異常により手術が中止された症例は認めなかった.周術期の合併症として高血圧を1例に認めたが, その他, 術前検査やその異常に関連する合併症は認めなかった.【結論】小児予定小手術の術前ルーチン検査の有用性を積極的に支持する根拠は乏しく, 問診, 理学所見とその結果, 必要な検査で術前評価を行っても安全に麻酔, 手術を実施し得る可能性が示唆された.特に尿検査, 心電図は手術の可否の判断を目的としたルーチン検査としては不要で, 血液検査も血算, 肝機能, 感染症のチェックなどに限定し得ると考えられた.
著者
後藤 悠大 増本 幸二 新開 統子 千葉 史子 小野 健太郎 坂元 直哉 五藤 周 瓜田 泰久 高安 肇
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.1155-1160, 2017-10-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
39

【目的】小児精巣腫瘍は全小児固形腫瘍の約1~2%とまれであり,病理組織学的特徴や生物学的特性・予後が成人症例とは異なる.今回,当科で経験した小児精巣腫瘍の臨床的特徴を検討した.【方法】当科開設以来の小児精巣腫瘍を後方視的に検討し,小児精巣腫瘍の臨床的特徴や予後,治療の妥当性について検討した.【結果】当科が開設された1979年から2016年までの37年間における15歳未満の精巣腫瘍は9例であり,内訳は成熟奇形腫4例,未熟奇形腫1例,胎児性癌1例,卵黄囊腫瘍3例であった.術前画像でリンパ節転移が疑われた症例はなく,病期は全例がI期であった.手術は術前より成熟奇形腫が疑われた1例に腫瘍核出術が行われたが,その他の症例では高位精巣摘除術が行われた.胎児性癌の1例のみ後腹膜リンパ節郭清術が施行された.いずれの症例も化学療法は施行されなかった.術後経過観察期間は平均5.2年(中央値3年)であり,全例に再発は認めていない.【結論】小児精巣腫瘍I期に対して高位精巣摘除術のみで経過観察を行い,再発・転移を認めず予後良好な結果であった.われわれの経験からは,思春期前の小児精巣腫瘍I期に対して,術後化学療法を行わず高位精巣摘除術のみとする治療法は妥当性のある治療の一つと考えられた.