著者
小松 輝久 大瀧 敬由 佐々 修司 澤山 周平 阪本 真吾 サラ ゴンザル 浅田 みなみ 濱名 正泰 村田 裕樹 田中 潔
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-127, 2017 (Released:2020-02-12)
参考文献数
41

2011年3月11日の東日本大震災は,東北地方の沿岸に甚大なる被害を与えた.津波は,沿岸漁業の社会的インフラである,港,市場,漁船,養殖筏はもちろんのこと,魚介類の再生産の基盤である沿岸のエコトーンであり自然的インフラである藻場など(本論文ではブルーインフラと定義)にも被害を及ぼした可能性があった.そこで,岩手県大槌湾および宮城県志津川湾において,藻場の被害状況とその後の変化を調べた.海藻藻場の被害は大きくなかったが,2014年からは震災後に加入したウニによる磯焼けが生じており,積極的な駆除を行う必要がある.砂地に生育するアマモでは,津波の波高が大きくなったために壊滅的な被害を受けた湾奥部では,2011年6月に埋土種子から実生に生長しており,アマモ場の回復が始まっていた.また,地形的に津波による被害を受けにくい湾央や湾口にあるアマモ場は残っていた.これらのアマモ場は種子供給源になるため,次の大津波に備えて保護することが望ましい.津波と地盤沈下により埋め立てで失われていた塩性湿地や干潟というブルーインフラは再生したが,復旧の埋立や巨大防潮堤などの工事で消滅した.繰り返される将来の大津波に備え,次世代のために持続的で健全な海洋環境および社会を育む沿岸域を実現するという視点から,ブルーインフラの回復を織り込んだグランドデザインを平時につくる必要がある.
著者
高安 肇 田中 潔 武田 憲子 渡辺 栄一郎 渡邊 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.66-70, 2014

女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
著者
田中 潔 五十嵐 透 三橋 啓了
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.11, pp.2120-2125, 1985-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2,2,2-トリクロロ-5-トリフルオロメチル-2,2,2,3-テトラヒドロ-1,3,4,2-オキサジアザホスホールと種々の求核試薬との反応から,2-位に対応する置換基をもつ新規テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体を合成した。たとえば,TMS-p-クレゾールなどの酸素求核試薬との反応では2,2,2-三置換テトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体が得られるのに対し,N-メチルアニリンとでは塩素原子を一つ残した2,2-二置換2-クロロテトラヒドロオキサジアザホスホールが,またp-アニシジンとではテトラヒドロオキサジアザホスホール環をもつホスファゼンが得られた。また,トリクロロテトラヒドロオキサジアザホスホールをNt-フェニルトリフルオロアセトヒドラジドと反応させ,二つのテトラヒドロオキサジアザホスホール環で構成された,リンをスピロ原子にもつ新規スピロ環化合物を合成した。以上得られたテトラヒドロオキサジアザホスホール誘導体の構造についてリンの化学シフト値を基に考察した。また他のスペクトルの結果についても考察した。
著者
田中 潔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.374-377, 1981-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
8

過量の飲酒が健康を害することはいうまでもないが, 少量の飲酒は健康にプラスすることがある。本稿では少量飲酒有益論の医学的根拠について述べていただいた。本文中で解説されているように, 近年発見された血清リポたんぱくのHDL成分を増加させて動脈硬化を防ぐことと, 脳の新しい皮質の抑制で古い皮質系を解放し文明病を予防することは, 確実視されている。これは飲酒長寿論につながるもので, プロカイン長寿法とも関連があって, 寿命統計とも決して矛盾しない。問題は過量にならない飲み方にあり, その一法として家庭での晩酌が勧められる。
著者
小松 輝久 三上 温子 鰺坂 哲朗 上井 進也 青木 優和 田中 克彦 福田 正浩 國分 優孝 田中 潔 道田 豊 杉本 隆成
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.127-136, 2009-02-27

海面に浮遊している藻類や海草のパッチは流れ藻と呼ばれ,世界の海で見られる.日本周辺では,ホンダワラ類がそのほとんどを占めている.ホンダワラ類は,葉が変形し,内部にガスを貯め浮力を得ることのできる気胞を有しており,繁茂期には数メートルにまで成長する.沿岸から波などにより引き剥がされた後,その多くは海面を漂流し,流れ藻となる.東シナ海の流れ藻の起源を,固着期と流れ藻期のアカモクの分布調査,遺伝子解析,衛星位置追跡ブイ調査をもとに推定した.その結果,中国浙江省沖合域の島嶼沿岸から流出している可能性が示された.ホンダワラ類の流れ藻は,漂流中も光合成,成長などの生物活動を行っている.伊豆半島下田地先のガラモ場での現地調査および陸上水槽実験を通じて,流れ藻の発生時期とその量,成長,成熟,光合成速度,浮遊期間を調べた.最後に,ホンダワラ類にとっての流れ藻期の生態的意義について議論した.
著者
山本 光夫 加藤 孝義 多部田 茂 北澤 大輔 藤野 正俊 小豆川 勝見 松尾 基之 田中 潔 道田 豊
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.243-255, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

東日本大震災後の沿岸環境変化の評価を目的とし,岩手県釜石湾において,海水中の栄養塩と重金属濃度,底質の放射性物質含有量に着目した海域環境調査を行った。栄養塩は冬期に高く夏期に低い傾向がみられ,震災前と必ずしも一致しなかった。これは湾口防波堤破壊による湾内環境変化の影響と考えられる。一方で重金属は津波の影響と予想される濃度変化はみられなかった。放射性物質も最大で 60 Bq/kg 以下と他の海域に比べ特に高い値ではない上に現在は減少傾向にあり,安全性の面で海域環境は震災前に戻りつつあることが示唆された。
著者
洞口 敬 斉藤 明義 田中 潔
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.518-530, 1997-10-01
被引用文献数
3