著者
高屋 康彦 廣瀬 孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.389-401, 2009-09-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
2 1

花崗岩を用いた二つの溶解実験の結果から,溶解特性に及ぼす要因について考察した.実験Aでは,固/液比を0.25,0.5および1に設定し,破砕した岩石試料を3種類の粒径(粗粒:32~45 mm;中粒:8~16 mm;細粒:1~2 mm)で振るい分けたもの200 gを用いた.実験Bでは,粉末試料1.0 gまたは直方体のブロック試料3.54×3.54×20.0 mm3を蒸留水50.0 mlと反応させた.その結果,溶解特性は表面積および固/液比の影響を大きく受け,その度合いは花崗岩では表面積の方が,花崗閃緑岩では固/液比の方が大きいことがわかった.花崗岩類が他の岩石に比べて溶けにくいことは,間隙率が小さいことと岩石中のアルカリ成分量が少ないことに起因すると考えられる.実験開始直後から初期の溶解特性は,有色鉱物の溶解特性の影響を受けやすい.花崗岩は破砕(粉砕)することにより,Fe,KおよびMgが溶出しやすくなるが,それは黒雲母の縁部からの顕著な溶解によると思われる.このことは,花崗岩の溶解特性が表面積の影響を大きく受けることの一因となっている.
著者
高屋 康彦 小口 千明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.369-376, 2011-07-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 5

史跡・吉見百穴の坑道壁面における凝灰岩の塩類風化による岩屑生産の速度を把握し, 塩類と岩屑の量的関係を求めるため, 崩落物質を回収する現地調査を1年間にわたって実施した.温度・湿度がともに低い冬から春先には粒状の風化による岩屑生産が著しく, それ以外の時期には岩屑量は非常に少なかった.壁面で観察された析出鉱物としては, 冬から春先にかけてはナトリウムミョウバンおよびハロトリカイトが顕著であり, 石膏とジャロサイトは年間を通して認められた.岩屑量および析出する鉱物種の季節性から, 塩類の析出に伴う岩屑生産に最も寄与している鉱物はナトリウムミョウバンおよびハロトリカイトであると考えられる.崩落した岩屑量と塩類量との間には一次の相関があることが明らかになった.
著者
高屋 康彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.131-144, 2011-03-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
39
被引用文献数
3

花崗岩地形の形成過程を理解するためには, 酸性条件下の化学的風化で生成される二次生成物の特徴をとらえる必要がある.そのため本研究では, 風化変質実験を実施した.実験では同一形状に整形した花崗岩および鉱物4種(黒雲母, 斜長石, アルカリ長石および石英)と酸溶液とを56日間反応させ, 試料表面の化学組成をXPSで求めた.低pH条件下の花崗岩の変質では, 黒雲母が顕著に溶解してケイ素酸化物(水酸化物)が形成された.中性から弱酸性条件下では, 斜長石の溶解によるpH増が黒雲母からの鉄酸化物(水酸化物)の沈殿を促進した.同時に, 黒雲母の溶解による水溶液中のMgなどの陽イオンの存在が斜長石の変質におけるアルミニウム酸化物(水酸化物)の沈殿を遅らせた可能性がある.このような構成鉱物間の相互関係は, 黒雲母の反応性を高めている.野外での花崗岩風化の特徴の一つである鉄錆の生成は, 斜長石の溶解によって促されることが明らかになった.