著者
中沢 一雄 原口 亮 芦原 貴司 難波 経豊 戸田 直 山口 豪 井尻 敬 高山 健志 五十嵐 健夫 倉智 嘉久 池田 隆徳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.4, pp.S4_208-S4_215, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
27

実世界に起きる現象はきわめて複雑であり, 理論的にその振る舞いを解析したり, あるいは記述したりするのは容易なことではない. 特に, 心室細動に代表される致死性不整脈のような複雑な心電現象を, 単純なモデル化や数式化により理解することは困難である. コンピュータシミュレーションおよび可視化は, その複雑なメカニズムの整理や直感的な理解のためには有効な手段である. 心臓の電気的特性は, 多種のイオンチャネルが複雑に関連しながら機能して決定される心筋細胞の電気活動, さらにそれらの心筋細胞が3次元的に配列し有機的に協調・連携した臓器というように階層性を持ったシステムの特性として決定される. したがって, 不整脈現象をより正確に理解するには, 心臓をシステムとして捉える工学的視点が要求され, 心臓の電気現象の各階層(イオンチャネル/心筋細胞/心臓)を統合して考える必要がある. 国立循環器病研究センターを中心に進められているプロジェクトでは, スーパーコンピュータを用いた高速大規模計算技術, コンピュータグラフィックスによる表示, 医用画像処理など, さまざまな工学的技術が含まれている. 心臓モデルを用いたコンピュータシミュレーションを中心に, われわれの研究グループにおける一連の不整脈研究を示す.
著者
後藤 哲雄 高山 健志
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.45-60, 1992-05-25
被引用文献数
10

オウトウハダニTetranychus viennensis Zacherには, 周気管の形状と雄成虫の体色, 産卵習性を異にする系統が存在する。これらは種内変異と考えられているが, 詳細には検討されていない。本研究では, 複雑な周気管を持ちバラ科樹木に寄生するリンゴとサクラ系統, および単純な周気管を持ちブナ科樹木に寄生するミズナラ系統が同一種であるかまたは別種であるかを明らかにする目的で, 寄主範囲, 増殖率, 生殖和合性およびエステラーゼザイモグラムを調査した。リンゴとサクラ系統の寄主範囲は非常によく類似していたが, ミズナラ系統とは明らかに異なっていた。ミズナラ系統の内的自然増加率はリンゴ系統と類似した値を示したが, サクラ系統の値よりは低く, ブナ科とバラ科寄生系統間の差は不鮮明であった。系統内交配およびリンゴとサクラ系統間の交配では雌雄の子孫が出現し, 和合性を示したが, バラ科に寄生する2系統とミズナラ系統の交配では雄の子孫のみが出現し, 生殖的な隔離が見られた。エステラーゼアイソザイムのバンドは, 3系統に共通する1本(E7)を含む8本が検出された。リンゴとサクラ系統では, サクラ系統に特異的な1本(E1)を除き, 共通する3本のバンドを示したが, ミズナラ系統はこれらと異なる3本のバンドを出現した。以上の結果から, バラ科に寄生するリンゴとサクラ系統は同一種であるが, ブナ科に寄生するミズナラ系統は明らかに別種であると結論された。