著者
村松 泰子 河野 銀子 藤原 千賀 高橋 道子 高平 小百合 中澤 智恵
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

学校教育におけるジェンダー・バイアスに関し、中学生の理科という教科の学習を取り上げ、興味や関心、態度のジェンダー差の有無、その背景要因を明らかにすることを目的とした実証的研究を行った。理科と自然・科学への関心や態度に関する質問紙調査を、初年度は中学1年生に、2年度は2年生となったほぼ同一の対象に実施した。中2調査は、中1調査と同質問と新質問で構成した。調査対象は中1調査が全国各地の公立中学校9校961名、中2調査は同様の8校869名である。中1調査は、学校特性差を見るため東京都と近県の国公立・私立中学計22校でも実施した。第3年度には、調査校の教員インタビュー調査を行った。データ分析の軸は、男女差、理科の好き嫌いによる違い、中1から中2への変化、理科のおもしろさの変化のしかたによる違い、成績の自己評価ランクによる違い、学校特性(入試の有無、共学と女子校)による違いなどである。主な結果は次のとおりである。(1)科学的現象への関心は、内容により女子が高いもの、男子が高いものがある。(2)理科への関心は、女子は生物的内容、男子は物理的内容で高く、学習内容の理解度は数学的センスを要する単元ほど女子が低い。(3)理科の好き嫌いや学ぶ意味のとらえ方の男女差は中1から中2にかけて拡大し、とくに女子は理科嫌いの傾向が強まる。(4)理科に対する態度や信念の男女差は、全般的には中1から中2にかけて減少傾向にあるが、女子の方が理科に対し否定的な学習態度を示す。(5)理科の実験時の中心的役割は男子、準備・片づけや記録担当は女子が多い。(6)得意・苦手な科目は、英語を除きジェンダー化しており、また理科の得意・苦手は男子のほうが全般的な成績の自己評価との関係が強い。(7)女子校の生徒は実験や理科に積極的だが、意識としては理科は男子の教科とする傾向が強い。