著者
村松 泰子 大竹 美登利 直井 道子 福富 護 佐久間 亜紀 中澤 智恵 谷部 弘子 福元 真由美
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジェンダーの視点からの教員養成のあり方の検討に向け、現状と問題点の把握のため、教員養成系8大学の教員・学生両者を対象に実証的研究を行った。初年次に教員に対する質問紙調査(回答703名)、2年次に学生に対する質問紙調査(回答1209名)を実施、最終年次に両調査の結果を合わせ分析し報告書を作成した。調査内容は、教職観、大学教員の教育活動・学生観、学生の学習活動・大学教員観、教師-学生関係、ジェンダー観などである。結果の一部は、下記の通りである。1)大学教員の7割以上が小学校教師は、経済的に安定・大学院レベルの知識が必要としているが、女性教員の過半は女性向きとし、男性教員の過半はそう思っていない。2)多くの大学教員は、学生の学力・まじめさ・積極性・批判精神・将来性には性別による偏りはないと見ているが、批判精神と将来性は女性のほうが女子学生を高く評価している。3)学生は男女とも、男性教員に「専門的知識の深い人が多い」、女性教員に「まじめな人」「やさしい人が多い」というイメージをもつものが多い。4)一般的なジェンダー観に関して、大学教員では「能力や適性は男女で異なる」に男性の過半数は同意、女性の過半数は不同意など、性別による差が大きい。学生も性別により差が見られる。学生の多くが「男女の違いを認めあうことが大切」としているが、「義務教育でもっと男らしさや女らしさを大切に」教育することには多くが否定的である。5)義務教育段階での教師と児童生徒の関係について「毅然とした態度を取るべき」などの権威的な考え方は、女性より男性教員のほうがやや強く、ジェンダーバイアスが強い教員ほど強かった。学生でも、管理主義的な考え方が男子学生のほうにより強かった。以上の通り、大学教員では、ジェンダーに関わる態度や意識が性別により異なる面があり、学生では男女ともに、意識としては男女平等を志向しながらも、すでにジェンダーを内面化している傾向がうかがえた。
著者
村松 泰子 河野 銀子 藤原 千賀 高橋 道子 高平 小百合 中澤 智恵
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

学校教育におけるジェンダー・バイアスに関し、中学生の理科という教科の学習を取り上げ、興味や関心、態度のジェンダー差の有無、その背景要因を明らかにすることを目的とした実証的研究を行った。理科と自然・科学への関心や態度に関する質問紙調査を、初年度は中学1年生に、2年度は2年生となったほぼ同一の対象に実施した。中2調査は、中1調査と同質問と新質問で構成した。調査対象は中1調査が全国各地の公立中学校9校961名、中2調査は同様の8校869名である。中1調査は、学校特性差を見るため東京都と近県の国公立・私立中学計22校でも実施した。第3年度には、調査校の教員インタビュー調査を行った。データ分析の軸は、男女差、理科の好き嫌いによる違い、中1から中2への変化、理科のおもしろさの変化のしかたによる違い、成績の自己評価ランクによる違い、学校特性(入試の有無、共学と女子校)による違いなどである。主な結果は次のとおりである。(1)科学的現象への関心は、内容により女子が高いもの、男子が高いものがある。(2)理科への関心は、女子は生物的内容、男子は物理的内容で高く、学習内容の理解度は数学的センスを要する単元ほど女子が低い。(3)理科の好き嫌いや学ぶ意味のとらえ方の男女差は中1から中2にかけて拡大し、とくに女子は理科嫌いの傾向が強まる。(4)理科に対する態度や信念の男女差は、全般的には中1から中2にかけて減少傾向にあるが、女子の方が理科に対し否定的な学習態度を示す。(5)理科の実験時の中心的役割は男子、準備・片づけや記録担当は女子が多い。(6)得意・苦手な科目は、英語を除きジェンダー化しており、また理科の得意・苦手は男子のほうが全般的な成績の自己評価との関係が強い。(7)女子校の生徒は実験や理科に積極的だが、意識としては理科は男子の教科とする傾向が強い。