著者
高木 滋樹 北村 章 丸本 卓哉
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.41-48, 1992-03-01 (Released:2017-05-31)
被引用文献数
3

1)キチンと同様に土壌内で特異的に放線菌密度を高める有機物をスクリーニングした結果,光合成細菌処理汚泥発酵物(CPBS)が選抜された。2)第1報で選抜した5株の拮抗菌をCPBSに添加・培養させた資材を調製した。調製した資材は細菌,放線菌密度が高く,添加した拮抗放線菌の存在が確認された。3)CPBSと拮抗放線菌を組み合わせた資材のダイコン萎黄病及びキュウリつる割病に対する発病抑制効果を検討した結果,発病抑制効果が確認された。発病抑制効果は第1報で報告した拮抗菌のみの場合よりも有機物と拮抗菌を組み合わせた場合で大きく,また単菌株よりも複数の拮抗菌を組み合わせた場合に顕著であった。4)ダイコン萎黄病発病抑制試験において添加した各菌株は土壌及び根部より再分離されたが,菌株によって菌密度は異なり,菌株により土壌及び根部での定着とその活動は異なると推察された。5)4種類の異なった土壌において,拮抗菌を含む資材Aは放線菌密度を高め,F. oxysporum密度には影響を与えなかった。6)以上のように放線菌密度を選択的に高める有機物と拮抗菌を組み合わせた資材は各種土壌で放線菌密度を高め,ダイコン及びキュウリにおいて発病を抑制した。しかしその作用については今後の解明が必要である。
著者
高木 滋樹 北村 章 丸本 卓哉 石田 大作 田中 秀平
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.51-58, 1996-03-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
3

1)種々の土壌環境下で,拮抗放線菌を含む微生物資材Aの施用が,土壌微生物相に及ぼす影響を調査した。pH5.3, 7.0, 7.8のいずれの土壌条件下においても,資材A施用により放線菌密度は高く維持されること,土壌水分量が極端に低く(20% MWHC)ない限り施用資材A中の拮抗放線菌は土壌に定着し活動すること,40℃の温度条件下で資材Aを施用した土壌において,F. oxysporumの密度は著しく低下するが,放線菌密度は影響を受けないことが確認された。また,資材Aの施用量が多いほど土壌中の放線菌密度が高くなることも明らかになった。2)資材Aの施用法とダイコン萎黄病に対する抑制効果の関係について検討した。資材Aの施用量が多いほど病害抑制効果は高くなった。また,土壌がF. oxysporumの汚染を受ける少なくとも1週間前までに資材Aを施用すると本病に対する高い抑制効果が得られること,あらかじめ土壌消毒を行った場合は土壌に速やかに資材Aを施用するとF. oxysporumの感染を遅延させ本病の防除に効果的であることが明らかとなった。3)資材Aとカニガラはともに連用によりダイコン萎黄病に対する抑制効果が高くなった。カニガラの効果は連用により徐々に高まったが,資材Aは1作目から直ちに高い効果を示し,少なくとも2作目まではカニガラよりも優れていた。4)以上の結果から,資材Aはダイコン萎黄病に対して多様な土壌環境下で抑制効果が期待できること,および施用法の工夫によってより高い効果が得られる可能性のあることが示された。
著者
遠藤 康夫 加倉井 和久 山田 和芳 笠谷 光男 神木 正史 小松原 武美 鈴木 孝 高木 滋
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

高温超伝導を示す銅酸化物及びこれらの物質と同じ結晶構造を示す同型異物質の主として磁性を中心に物性と結晶構造の相関を研究した。1.銅酸化物では超伝導発現と銅イオンの持つスピンの二次元的な反強磁性磁気相関との因果関係を徹底して調らべた。最も大事な收穫はキャリアーが正孔である場合は酸素サイドに広がったキャリアーのスピンの影響で磁気相関が滋常に大きく変化し、反強磁性的な磁気相関も壊されるのに対し、電子的キャリアーの場合では反強磁気性相関が残ることが実験的に証明された。これは電子相関と磁性との密接な関係を論ずる基礎となる。2.キャリアーの濃度が増えると、磁気相関距離が短くなり、電子相関の強さとキャリアー濃度及び反強磁性相互作用の間の対応がついた。3.超伝導発現と磁気相関の関係については、全く同じ結晶を使って、酸化の度合いを制御して超伝導転移を変化させることに成功し、その結果として反強磁性相関及びスピンの揺らぎが超伝導の発現と密接にからんでいることを見つけた。4.同形のNi酸化物で、酸化度の違いによって微妙に反強磁性構造が変化することを見つけた。この時は結晶構造も微妙に変化することも見つけている。その他にもUを含むアクチナイド化合物の電子相関の強い物質について、超伝導反強磁性電子相関の3つの因果関係を含む関係を含む研究に着手した。この研究には、1K以下の極低温で中性子散乱が必要なために希釈冷凍機の調整を行なって、測定実験が可能なところにこぎつけた。