著者
高村 圭子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.22-29, 2014-06-10 (Released:2019-06-10)

延慶本をはじめとする『平家物語』諸本には「頼朝は謀叛によって日本国を掌握する力を「天」に与えられた」という思想が散見される。中国の易姓革命思想に基づいていると考えられるが、このような思想は日本の天皇制とは全く相容れない。日本における「天」は仏教や神道とも習合して天皇制と共存しうる思想へと変容を遂げてきたが、南北朝期には「天は帝よりも上位に位置する」ことを前提とした思想が定着しており、『平家物語』はその早い段階として位置付けられると考えられる。
著者
高村 圭子
出版者
東京女子大学
雑誌
日本文學 (ISSN:03863336)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.90-101, 1995-09-30
著者
高村 圭子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.60-67, 2004-05-10 (Released:2017-08-01)

古典作品中における「罪(罪業)」と「悪(悪行)」という概念には明確な区別がなされないことが多いが、厳密に見ると「悪」は他者に明確な損害を与えるもの、「罪」は他人ではなくむしろ自分を傷つけ悩ませるもの、という傾向がある。小稿では、人間の「罪」と「悪」の両相を描く軍記物語である「平家物語」を中心に、二つの思想が重なり合って作品世界を形成していく様相を、他の古典作品との比較を交えて分析していく。
著者
高村 圭子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.21-28, 2005-06-10

延慶本『平家物語』の末尾にある建礼門院譚には、女性としての「業障」や、驕りによって国を傾けた平家一門としての「悪業」が繰り返し強調されており、また女院が後白河法皇を「善知識」と呼ぶという特色もある。ここには進んで過去を語り懺悔することによって煩悩から救われるという、謡曲におけるシテとワキのような構造が現れていると考えられる。このような特殊な女院像について、近年注目されるようになった小野小町造型との比較をも視野に入れつつ、作中における役割やその造型を考えていきたい。