著者
森田 敏 白土 宏之 高梨 純一 藤田 耕之輔
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.102-109, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
29
被引用文献数
22 44

従来,水稲の高温による登熟不良現象については多くの研究が行われたが,高夜温と高昼温のどちらが主因であるかについては一定の結論が得られていない.本研究では,人工気象室を用いて,34/22℃(昼温/夜温)の高昼温区に対して,これと日平均気温が同じである22/34℃の高夜温区を設定し,22℃一定温度あるいは28/20℃(日最高気温/日最低気温)を対照区として,玄米1粒重と良質粒歩合について比較解析した.その結果,玄米1粒重は高夜温区においてのみ対照区より有意に低下した.一方,玄米の良質粒歩合は高夜温区と高昼温区の両者で低下した.したがって,高温による玄米1粒重の低下の主因は高夜温にあること,および高夜温と高昼温のいずれもが外観品質を低下させることが明らかになった.高夜温区における玄米1粒重の低下は,いずれの着粒位置でも観察されたが,試験年によっては,弱勢穎果である3次籾での低下程度が大きかった.各試験区間の玄米1粒重の違いは,玄米の3つの粒径(粒長,粒幅,粒厚)を乗じた玄米体積の指標値の違いにほぼ一致した.高夜温区では対照区に比べて主に玄米の粒幅と粒厚が減少し,高昼温区では粒幅が減少したものの粒厚は明らかに増大した.これらのことから,高夜温区では玄米の粒幅の減少を粒厚で補えずに玄米1粒重が低下するのに対し,高昼温区では玄米の粒厚の増大が粒幅の減少を補償して玄米1粒重が低下しないとみることができた.