著者
高橋 公夫
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.264, pp.1-14, 2015-07

資本主義の次にやってくる社会は社会主義社会であるというのがかつての常識であった。ドラッカーはソ連崩壊の直後に『ポスト資本主義社会』を出版し,資本主義が勝利したのではなく資本主義はすでにポスト資本主義社会になっている。それは知識社会である。ソ連はその現実に対応することができなかったために崩壊した,という説を展開した。以下,知識社会としてのポスト資本主義社会とはどのような社会か,そこではどのような組織が形成され,どのような管理が行われるのか,またいかなる課題が提起されるのか,といった問題を取り上げる。結論的にはポスト資本主義社会における組織は市場や環境に開かれたものとなる。つまり,知識社会における組織のメンバーである知識労働者やサービス労働者はできる限り市場や環境に直接に向き合うような職務環境で裁量的に働くようになる。それにより職場コミュニティの余地は少なくなり,NPO のような組織がコミュニティの役割を果たすようになる,ということである。しかしそれで人びとは幸福か,というのが本稿の問題提起となる。